”名前を呼んではいけない”『バイバイマン』


『バイバイマン』予告編

 ホラー映画!

 古い屋敷に残されたテーブル、その中のメモに記されていた一つの名前……。ふざけて交霊会をしていた四人の大学生の一人が、その名前を口に出してしまう。「バイバイマン」……。かつてその名を口にした者が全てジャーナリストに射殺され、そのジャーナリストも自殺したというが……。

 冒頭、何かを恐れているらしい男による無差別射殺事件。許してくれ、とか言いつつ家族や隣人を次々に射殺。心底怖がってる感じが出ていて、このオープニングはなかなか良かったですね。
 で、月日は流れ、射殺事件のあった家に主人公カップルと親友の男が引っ越して来る。男二人、女一人という組み合わせには、なにかしら火種の匂いがするな……。最初に目にするのは「しゃべってはいけない、考えてはいけない」というキーワード。冒頭の男が残したそのものズバリなメッセージなわけだが、それは何を指しているのか、というのが、奇怪な黒い犬を連れた白い顔の男、バイバイマン……!

 バイバイマンの名前を知ってしまうと、同時にそれを「しゃべってはいけない、考えてはいけない」という考えに取り憑かれてしまい、余計にしゃべりたくなる……ということなのだが、冒頭の男こと取り憑かれたジャーナリストはしゃべった人を皆殺しにしてしまったそうで、何か回りくどいというか逆効果なんじゃないか。
 バイバイマンさんは取り憑いた後は人に幻を見せて仲違いさせ、最終的には殺し合わせる。死んだ人間の魂を犬が喰らう……という筋書きで、本体は犬なんじゃないかとも思うところ。しかし、自分の姿をチラチラ見せてプレッシャーをかけ、精神的に弱らせるのはいいとして、それが肝心の「自分の名前を呼ばせる」ことに直結してないのがどうもおかしい。自分の存在と共に、警告である「しゃべってはいけない、考えてはいけない」まで拡散するので、標的がいち早く周囲の口を塞いでしまう。それはまあ食べるからいいとしても、肝心要のはずの名前の拡散が思うように進んでいないんではないか……?

 じゃあどうすればいいのか?というところで、やっぱりバイバイマンさんはもっとSNSを活用して、どんどん名前を広めていくべきなんじゃないの。普通にネットもある設定だし、あっという間に全米に広まるんじゃないかな……。
 そこまで話を広げたくないから、どうも設定が妙なことになり、サスペンスも盛り上がらないという本末転倒ぶり。広めたいんか広めたくないんかどっちやねん……という、バイバイマンさんの戦略がなってないだけの話になってしまっている。端的に怖くないわけよ……。いや、犬一匹養えればそれで十分という、まあまあ奥ゆかしい怪物なのかもしれないね。
 久々に見たキャリー・アン・モスさんは、『マトリックス・リローデッド』の時にちょっと老けたかなと思いましたが、それ以降変わらんなあ。もっとバイバイマンとガチで勝負して欲しかったね。