”貴様だけは生かしておかない”『暗殺』
[動画] チョン・ジヒョン&イ・ジョンジェら主演「暗殺」メイン予告編
アジアン映画祭五本目!
1933年、日本統治下の朝鮮半島。大韓民国臨時政府は、日本軍の要人と親日派の暗殺のため、三人の腕利きを送り込む。その一人、狙撃者アン・オクユンは、まだその作戦の先に待ち受ける思わぬ因縁と運命を知らずにいた。さらに、三人の暗殺者を追い、臨時政府の裏切り者が刺客を送り込む……。
これも劇場公開が決定済み。今回、唯一の韓国映画鑑賞となりました。レジスタンスを裏切り日本政府につく「あるいは裏切りという名の犬」イ・ジョンジェ、満州で育った凄腕の女兵士チョン・ジヒョン、さすらいの賞金稼ぎハ・ジョンウとその執事オ・ダルス、などなど豪華キャスト。
日韓併合を背景に、太平洋戦争後の分断までを一気に駆け抜ける力技の映画で、尺も長いが設定も複雑。メインの舞台である1930年代のソウルに雪崩れ込むまでに、時間的にも地理的にもよく動く。満州、上海を経て、行く先々で数々の陰謀が……!
流れを追っていけばその時点その時点ではわかるのだが、後から思い出すと複雑で説明しづらい。キャラクターの状況や立ち位置がコロコロと変わった果てに結末があるのでね。
そんな中でも、登場当初から常に立ち位置を変え続けるイ・ジョンジェさんがやはりお話の中心。ポリシーなきキャラクターで、当初は愛国心溢れる人間だったはずが、拷問の果てに「転んだ」ことで180度変わってしまう。
時代が時代なので、現地を占領して我が物顔の日本軍が当然悪役である。メインキャラの一人である若き将校が、躊躇なく少女を射殺するあたりで悪者描写はピークに到達! ひどすぎ! しかし、こんなことあり得ないとも言えんからな。ただまあ、そうして打倒されるべき敵として描かれている日本軍だが、こうして絵に描いたような戯画的な悪役になっている方が逆にスケールが小さく感じられるのも事実。この映画の中で描かれる主人公の本当の敵は、誇りを捨て保身と金のために日本に朝鮮を売り渡した「売国奴」であり、その究極系とも言えるジョンジェさんなのだな。
豪華キャスト全員に見せ場を割り振る都合上、特に後半がやたらとてんこ盛りになっている。前半がボリューム不足と言うわけではないのだが、末広がりに見せ場と急展開が盛られていくあたり、さすが韓国映画だな……。こういうガチの大作だとこうなるのか。
そういう意味で、完全に期待値通りの面白さはあるのだが、細部は結構いい加減だったり、展開の強引さがキャスト頼みだったりするところも多い。オ・ダルスの活躍は反則級だな。
日本人が日本語しゃべるシーンはネイティブの役者じゃないので、どうにも不自然。たぶん、中国語も同じような感じなんではと思う。ビッグネームも日本語でしゃべるシーンは自分でしゃべるんだけど、なぜかハ・ジョンウさんがやたらと日本語うまい。他はネイティブからすると苦しい人が多いのだが、日本人役は日本人キャストにしてもらいたかったところ。池内博之とかな! 『10人の泥棒たち』では中国語しゃべれないキャラだったチョン・ジヒョンが今回はしゃべっている。
さすがに大味さは否めないが、タイトル通り暗殺に始まり、数十年の時を経て暗殺に終わるあたり、しっかり構成もされているね。イ・ジョンジェさんが老けメイクでヨレヨレの年老いたボディを作って熱演しているのだが、チョン・ジヒョンは一切歳とってないというあたりは、もはや確信犯か……! 多分、当初は100分ぐらいのかっちりしたプロットがあったんだと思うが、豪華キャストが決定するに連れて内部から膨張して破裂寸前になった……という感じだろう。
韓国映画らしいソリッドさがないわけではないが、現代劇と違って壮大なホラを吹いている感覚があり、良くも悪くも「時代劇」(「西部劇」でもある)になっている印象。充分面白いし、メインキャストのファンなら必見ですね。
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