”わかっちゃいるけどやめられない”『10人の泥棒たち』


 中韓オールスター映画!


 韓国で一仕事を終えたばかりのポパイたち窃盗団に来た依頼……それはかつてポパイらを裏切った伝説の泥棒、マカオ・パクからのものだった。巨大カジノから、幻のダイヤモンド「太陽の涙」を奪うというその計画のため、ポパイら5人の韓国チームと、「太陽の涙」と浅からぬ因縁を持つ男チェン率いる中国チーム4人、そしてマカオ・パクの10人の腕利き達が結集する。それぞれの野心と因縁を胸に秘め、かつてない窃盗計画が始まる……。


 1800円均一で二週間限定、という足元を見た興行にはうんざりさせられたが、なんとか時間を作って行ってきました。
 ぱっと見、『オーシャンズ11』みたいな映画かと思ったが、良くも悪くもクルーニーとブラピが目立ってたあれに対して、2時間18分の上映時間を費やすことで、各キャラに見せ場を割り振ってバランス良く作っている。こちらの方がオールスター感は強い上に、実はそれほど馴染み深い役者が多いわけではない当方にして見たら、誰が最後に笑うのか予想がつかないので、最後までハラハラしつつ観ることが出来たよ。
 当然、シリーズ化なんて前提になってないので、10人の中でも化かし合いと裏切りがあり、敗れた者は脱落していくこととなる。韓国チームと中国チーム、そして依頼者のマカオ・パクという男……三者それぞれ、さらには一人一人の思惑を前半で振っておいて、舞台となるカジノへと雪崩れ込む。


 いやはや、泥棒というのは確かに当たれば大きいのだが、この前半のせめぎ合いから、後半の脱落模様を見ていると……いやはや、全然、割に合わないよなあ。ハイリスクすぎる。でも、それがたまらんのだな、この人たちは。リスクの中に巨大なリターンがあり、その中で感じられるスリル、そして突如燃え盛るロマンス……心だって常に盗みの対象なのだ。そんなネジのぶっ飛んだ曲者の集まりだということがよくわかる。


 ノーキャストの映画なら、カジノをクライマックスにしてさらっと終わったと思うが、ここはオールスターキャストなので、終盤は各キャラの行く末と、裏にあった復讐劇の顛末をも丁寧に追って行く。主役だけど四十代後半でオッサン体型のキム・ユンソクが、ワイヤーでマンションの外壁に飛び出してしまうシーンは意外性があって良かったね。同じく謎のおっさん(ウー・バイ)が超かっこいいツイ・ハークの『ドリフト』を思い出しましたよ。
 かなり複雑なプロットだけど、ぎりぎりのところでうまくバランスを取っていて、最後まで破綻なく走り終えてました。短い出番で消えるキャラは過剰に鮮烈に、出ずっぱりのキャラは細かく多彩な表情を見せるさじ加減がいい。


 そして久しぶりに見たわ〜、チョン・ジヒョン! 『ラスト・ブラッド』以来かな。30超えた彼女ですが、今回はいい感じに大人らしく、こすい雰囲気も備えているよ。それでいて、あの弾むような所作、独特の躍動感は健在。翌日、積んでた『猟奇的な彼女 ディレクターズカット』見ちゃったわい。惚れ直したね! 今回はひさびさの韓国映画復帰ということなので、また次回作も期待しております!


 吹替版をプッシュした興行だったけれど、字幕版で観たら数カ国語が入り混じるシーン、言葉の通じなさをネタにしたギャグが多数あったので、ちょっと驚いた。これは断然、字幕でしょ〜。

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