”バドミントンのおじさま”『全力スマッシュ』


 大阪アジアン映画祭2015、九本目。


 バドミントンの王者になりながら、暴力事件を起こして業界から永久追放されたスキニー。兄の店を手伝いながら自堕落な日々を過ごしていたが、ある日、バドミントンのシャトルの形をしたUFOを目撃。エイリアンに追われて廃校に逃げ込む。そこでは、前科者の男たち三人がバドミントン部を結成していた。運命の導きにより集った彼女らは、競技会を目指して練習を開始するのだが……。


 『燃えよ!じじぃドラゴン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130124/1359023787)のデレク・クォック監督の新作。最近は『西遊記』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20141204/1417697888)の共同監督にも抜擢されるも、チャウ・シンチーともめてしまったという話。ただまあ、確かに作風に通じる部分はあるよな。
 チャウ・シンチーの奇怪なまでの手際の良さとテンポこそないが、スポ根もののフォーマットに大げさな演出とベタなギャグを物量作戦のごとく盛り込みつつ成立させる手腕は、脚本込みで見事である。


 今年の映画祭、『逆転勝ち』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150325/1427288360)も同じジャンルでまあまあ面白かったのだが熱量が段違い。監督は割と若い人らなのだが、今度は中年世代のカムバックに焦点を当て、『ロッキー』的な物語に仕上げている。『じじぃドラゴン』よりかなりバジェットも膨れ上がっているせいか、演出はそのままに映像も美術も豪華さ倍増。イーキン・チェンを筆頭にキャストも揃い、大作感がぐっと出てきた。


 で、その上で題材が、なんか羽根がひょろひょろと飛ぶイメージのバドミントンなんだから、もうそのギャップだけで面白いわけである。さらにそのギャップを逆手に取り、空気を切り裂きコートを穿つスマッシュが炸裂する! 試合は流血戦の様相を呈し、力の入ったものへ……!


 『じじぃドラゴン』でもおなじみのケースである、だらしない師匠も登場するのだが、やはり終盤には大活躍。ジョシー・ホーが『百円の恋』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150115/1421323883)並に最初太っているあたりも見所で、復活してからはまさに「全力スマッシュ」を連発! イーキン・チェン演じる元囚人とのコンビも面白い。途中にちょっと出た恋愛話は引っ張らなかったが、そこは次回作に温存か。


 終盤に単に勝って終わるシンプルなものにまとめないあたりも、作風なのかな。相手、試合に勝つことではなく、自分に勝利することこそが重要で、No.2でも胸を張りたいというイズムが徹底されている。試合が終わった時には、必ずやリスペクトが生まれる……。


 テレビ業界批判などもちょろっと取り込んで、大作として幅広い目配りも怠りない辺りもいいですね。今回の上映が先行プレミア上映だったので、監督も来日。自ら注文して僕の観た回では音響もボリュームアップ、大迫力で楽しめましたよ。


 『軍中楽園』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150413/1428935782)と並んで一般性の高い、要は「普通に面白い」映画なので、これもなんとか公開して欲しいな〜。

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