”あの家へ帰ろう"『マンデラ 自由への長い道』
ネルソン・マンデラの人生を追う映画。
南アフリカの弁護士だったネルソン・マンデラは、反アパルトヘイト活動に身を投じ指導者となる。だが、政府によって捕らえられ終身刑となり、獄中で未来のない日々を送ることとなった。妻のウィニーもまた反政府活動をしたために逮捕され拷問を受ける。だが、それでも二人は刑務所の内と外で自由と平等のために戦い続ける……!
弁護士時代から始まり、活動家となって投獄され、やがて釈放され大統領になるまでを描く。さすがに物語の期間が長いので少々ダイジェスト的であり、さらに「こりゃあすげえぜ!」というエピソードもないので、いささか起伏には欠ける作り。まあ実話ですからね。その分、丁寧に時間経過を追いかけているので、シンプルでわかりやすく、マンデラ入門としてもいいんではないか。
『パシフィック・リム』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130711/1373529625)でも大活躍だったイドリス・エルバさんが特殊メイクで老けた時代までを熱演。モーガン・フリーマンがやるとやっぱりモーガン・フリーマンになってしまうのだが、まあこの人ぐらいならばまだカラーが薄いので、後半はそのメイク技術も手伝ってすっかりマンデラ。むしろ前半の武闘派なイメージを踏まえてのキャスティングだったと思うが、後半も良かったですよ。
対してナオミ・ハリスさん演じる妻ウィニー役がむしろ全然老けずに、強烈な存在感を発している。マンデラと並行して投獄され、拷問を受けるシーンも描かれる。二人はそうして志を同じくして、共通の体験と愛によって強く結ばれている……はずだったのだが、やがて少しずつ溝が生まれて行く。ネルソン・マンデラ不在の中、代わりの表立ったアイコンとして闘争路線を支え続けてきたウィニーが、獄中で考えを変えていく夫との距離を感じ、予告編では華々しいシーンとして見せられたマンデラ釈放と夫婦の再会に際しても、どこかよそよそしいものを感じずにはいられないシーンの悲しさ……そしてやがてくる離別……。
オープニングとラストで、家族に囲まれたシーンの「夢」がそれぞれ描かれるのだが、投獄前と後の現実とそれぞれ対比することで、より切なさが増すのである。
途中で登場したスラム街の雰囲気が全く『第9地区』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100414/1271246089)だったり、もちろん『インビクタス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100227/1267268647)も思い起こさせてくれたりと、まさに南アフリカ映画の系譜でありましたね。なかなか勉強になりました。
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