"ミーツ・オカルティック&エロティック"『邪神拳』

ドニー・イェン 邪神拳 [DVD]

ドニー・イェン 邪神拳 [DVD]

 ドニー・イェン主演作。


 教え子たちとバーベキューを楽しんでいた大学教授のチン・フェイ。だが、突如月が赤く光り、謎の男が襲撃してくる。教え子たちを殺され、立ち向かったフェイも意識を失い、警察に容疑者として逮捕されてしまう。事件の裏に、謎の儀式が存在していることを突き止めたフェイと仲間たち。だが、謎の男は今度はフェイの元妻に迫りつつあった……。


 まだまだ続いています、ドニーマラソン。今作は、DVDジャケットの表記によるとなんとあの『捜査官X』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120326/1332734955)でも共演したジミー・ウォング監督作……ではなく、王振仰(ジミー・ウォン)という全然違う人らしい。ここらへん、allcinemaなど見ても情報に混乱が見られるし、英語名はジミーではなくトミー・ウォンという話もあって、訳がわからない……。
 今作のドニーはなぜかまったくオレ様要素がなく、借りて来た猫のように淡々と演技とアクションをやってるように見えるので、やっぱり昔はジミーさんが怖かったのかな、とか思っていたが、これはおそらく違うのであろう。


 ドニーさんの役は大学教授、だが、メガネをかけて時々スーツを着るだけといういい加減な役作り、しかも相変わらずカンフーは超つええという、まったく意味のわからないキャラクター。しかし教え子にモテモテなところを、突然襲った謎の魔人ロー・ワイコンに襲われて完敗。さらに教え子惨殺の濡れ衣を着せられて逮捕されることに……。探偵や元嫁、元嫁の今の彼である刑事ベン・ラム(『ドラゴン危機一発’97』のアウーッの人)に助けられ、真犯人を追う、という展開。前半常に半裸の元嫁が、魔人の力を呼び覚ます鍵である事が明らかになり、彼女が襲われたことで濡れ衣は晴れるのだが、不死身の怪物を倒すためにカンボジアへ渡らなければならなくなる。
 途中から、カンボジア(……ということになってるけど、多分もっと近場だろう……)に住む部族の酋長の娘ポーリン・ヤンが主役然として登場し、魔人と戦ったりして、徐々に薄くなるドニーさんの影。水着やら下着やら微妙にエロいシーンがあったり、女が惨殺されるシーンがあったりで、エログロオカルトものの要素が強く、そこに銃撃戦とカンフーがぶち込まれているのだから、わけがわからないなりにまあまあ笑える映画となっている。


 しかしドニー映画におけるドニー指数(ドニーさんがいかに活躍するか、キメ顔を見せるか、オレ様アピールをするか、脱ぐか)に関しては限りなく低く、ここまで精彩を欠くのは珍しい。いつものパターンとしては「脇役なのに主役を食ってしまう」か「主役だからもちろん脇役を食ってしまう」のだけど、今作では複数の主人公の一人という中途半端な立ち位置で、ストーリーなどが限りなくいい加減なせいでしょう。教え子やら図書館長の敵討ち、という話だったのだが、後半はほぼ忘れ去られているし……。ドニーさんとしては珍しいガン・アクションもあるが、そこもいかにも適当にぶっ放しているようにしか見えんのが痛い!


 まだまだこの時期、彼のポテンシャルを発揮する映画には恵まれないですな。次の主演作は『猟豹行動』(日本未発売)で、昔にビデオCDで観たけど、まあまあ面白かったような記憶あり。そしていよいよ、『ワンチャイ 天地大乱』の悪役に続くんですねえ。


 さて、ドニーマラソンの次回は『新流星蝴蝶剣』です!

ドラゴン 危機一発’97 [DVD]

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捜査官X [Blu-ray]

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