"さあ、夢判断をしよう"『危険なメソッド』


 クローネンバーグ監督作!


 フロイトの提唱した談話療法によって、美しき患者ザビーナの治療に当たった精神科医のユング。画期的なその療法によってザビーナのトラウマの原因を突き止める。だが、あまりにその内面に深く入り込んだことで、二人は愛人関係に陥る……。フロイトに認められ、その後継者に指名されるユングだが、次第に研究の方向性の違いから確執を深めて行き……。


 まるで『裸のランチ』と同じ思考をたどってつけられたかのような邦題に驚愕したのも、もう遠い昔のような気がする。タイトルでデンジャラス、と出ても、「ああ、デンジャラスは危険ね……」とスムーズに納得してしまったぜ。


 冒頭から相変わらず体当たりの熱演を敢行するキーラ・ナイトレイに胸熱! しゃくれまくる顎はもはや演技と言うよりセルフパロディだ! 自分はこの人のファンであると思ったことはないが、気がつけば『シルク』とか『わたしを離さないで』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110329/1301394078)とかソフトも持っている。よく考えたら、この三作品で全部乳首を出しているではないか! 応援したい役者だな〜。


 またまたヤリチン役で登場のファスベンダー・ユングが、なんとかキーラの病気を治すもののスパンキングの性癖は変わらず! 設定や映像には露悪的なものを感じないでもないが、描写そのものはむしろ淡々としていて(実話だしな……)、ああこれがクローネンバーグの筆致ですな、と思い出した。ファスベンさんは、『シェイム』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120323/1332493929)と同じく深刻ぶった面をしながらも「やっぱり愛人は必要だし……」と相変わらず! その苦悩をキーラ・ナイトレイ演ずるザビーナとある面では共有し、ある面では深い断絶を抱える。ヴィゴ・モーテンセンフロイトともそれは同様で、尊敬し共有する面を持つ一方で、次第に差異に囚われていくのだね。
 最後には静かな感動が……。しかし実話だからしようがないが、ザビーナが後にナチスによって撃たれ非業の死を遂げたのに対し、ユングはのうのうと安楽な死を迎えてるあたり、やっぱりヤリチン野郎はいらっとさせてくれるのであった。


 前半ちょっと寝てしまったので、ヴァンサン・カッセルがなんの役だったか、まったく思い出せません、すいません!

ザビーナ・シュピールラインの悲劇 ユングとフロイト、スターリンとヒトラーのはざまで

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裸のランチ 【Blu-ray】

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