”愛憎は止まらない”『香港、華麗なるオフィスライフ』


『香港、華麗なるオフィス・ライフ』予告編

 ジョニー・トー監督作!

 香港にそびえる巨大総合商社ジョーンズ&サン。女社長のチャンは会長の愛人でありながら、敏腕の経営者として鳴らしていた。巨大な取引が進む中、副社長のデイヴィッドは密かに会社の金を使って投資を進め、さらにチャンをも通じて野望の実現を図るのだが……。

 東京ではカリコレで先んじて上映してましたが、大阪では遅れて公開。今作はミュージカルということで、チョウ・ユンファがゲスト出演。ちょっと普段のジョニー・トー映画とは毛色が違いますね。
 主演の一人であるシルヴィア・チャンが自ら脚本・演出を手掛けた舞台のミュージカルとして、オリジナルが割とかっちり存在している、ということで、ストーリーもこれまたジョニー・トー印ではなく、ノワール路線はおろか、一連のワイ・カーファイとの共作や恋愛ものとも違うテイスト。

 では新境地なのか……というと……? 会社上層部内の軋轢と愛憎、権力争いと愛人関係という図式がまず古臭い。もちろんミュージカルなのでそれを大仰に歌い上げ、情緒的に煽る。そこに絡んでくる新人社員二人、一人は社長の娘という若い力……。

 すでにお金の話としては『奪命金』という傑作を撮っているジョニー・トーなので、いかにも新鮮味がなく、状況描写も社内が中心なので、他社との駆け引きもいまいち実態が見えてこない。テクニカルさよりも、ドロドロの愛憎がオフィスライフを動かし、昼ドラ的な華麗と言うより陰湿なやりとりが繰り返され、それをウェットな演技と大仰な歌唱が煽る……という、まあミュージカルなんだからそりゃそうなんだろうが、見てて疲れる代物であったわ。

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 若い力がその状況を打破し切り開いて行く……というよりも、上の自滅が原因で、結果はともかくその上の人たちの行動にも一本筋が通っているかと、まあ原因は愛憎なんでどうも場当たり的なのだよね。

 さすがにオフィス内や地下鉄などをスケルトンで構成した豪華セットは見所であったが、これはジョニー・トー映画なんで、香港の街や建物がセットとCGというのは悲しいな……。『単身男女』のオフィス描写そのままで、香港の街中で踊り狂ったら面白かっただろうに。

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 やっぱりちょっと資質に合ってなかったんじゃないか、という映画で、なかなかにもやもやさせられました。次は『三人行』に期待だ。

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