"窓の向こうを見てごらん"『単身男女』(原題)


 大阪アジアン映画祭にて鑑賞、これはまだ日本公開未定だ……。


 向かいのオフィスで働く若手社長と、事故に遭いそうなところを助けてくれた建築家。二人の男との出会いと別れから3年……。再会した男達は、今も彼女を想い続けていた。女は止まらない男達の情熱の間で戸惑い、揺れるのだが……。


 今年二本目のジョニー・トー監督。ジョニー・トーの恋愛ものは『ダイエット・ラブ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101018/1287381025)しか見てないのだが、正直あまり感心できる内容ではなかった。が、今回はすごかったなあ……。昨年の同映画祭で、「次回作はリーマンショックを題材に金融の世界を描く」と言ってたのだが、一応投資銀行が舞台だけど全然『ウォール街』みたいな話じゃなくて恋愛もの。だまされた! でもこの映画祭で初公開らしいので、良しとする。


 「隣のビルの窓」を軸に、壮絶な戦いが繰り広げられる。ここまでやるか! まだやんのか! やはりギャグの基本は繰り返しか。あまりにしつこくやるので「いい加減にしろ!」と途中で怒り出しそうになったが、最後はスケールのでかさに圧倒され、文字通り力技で寄り切られた。味わった虚脱感が、スポーツマンのごときさわやかなラストとシンクロした……。


 ルイス・クーとダニエル・ウーって、どっちもまだ若手のような気がしてたが、余裕でオレより年上なんですよね。ダニエル・ウーは『香港国際警察/NEW POLICE STORY』の時、ジャッキーが若手を多く起用した、というのが印象に残ってて、年下のニイちゃんみたいに思ってたのだが……。
 ルイス・クー演ずる投資銀行の社長は女好きで直情的、サービス精神旺盛な性格で、金持ちでイケメン。欲望にあっさり負ける下半身のだらしないタイプで端的にダメな奴なんだが、どこか憎めない。
 対するダニエル・ウーの建築家は、酒浸りだったのにヒロインと出会ったことで自分を変え、成功する。ずばり説明が入るが、約束をすっぽかした彼女を三年も思って再会を夢見ていた「火星人」のような男。ただまあそうして一途ではあるんだがまったく草食系ではなく、ルイス・クー相手には嫉妬を露にし、「隣のビルの窓」パフォーマンスに積極的に身を投じていくのである。


 とにかくテンポがいい。おなじみラム・シューも間の手のごとく投入し、男二人と女一人の三者三様の感情表現を矢継ぎ早に描きつつ、二人の男の押しに揺れ動く女に「展開が速過ぎる!」と言わしめる怒濤の盛り上げ。急展開にヒロインが「ちょっと待て」と口にしてしまうのは、斬新じゃないかなあ。当然、そんなことじゃあ止まらないのであり、事態はどんどん加速していくのである。
 映像の過剰なスタイリッシュさは恋愛ものでも生きる。舞台の香港のロケーションが素晴らしく、向かい合うオフィスの窓越しの映像が映えること映えること。美男美女をバシッと並べて、埃一つない綺麗なオフィスで、画面に映るとこでは全然仕事してない。実はジョニー・トーらしくすごくファンタジック。
 でも誇張された表現はあるが、心理はリアルな描写に立脚してる。いや……あれが死んだシーンでは号泣しかけたよ……。役者の表情の撮り方も丁寧で、一歩間違えたらオーバーアクトなのだが、そう感じさせない。


 主演のカオ・ユアンユアンもなかなか良いですな。『プロジェクトBB』に出てたそうだが、観てないや。天真爛漫で無防備で、騙されやすく流されやすいキャラクター。でもちゃんとした価値観を持っていて、その境界線上を彷徨うルイス・クーに惹かれつつも恋し切れない。そこに心の通うダニエル・ウーが現れて……。


 フェイ・ウォンの『我願意』が響く中、自分のことについてもチラチラと考えた。この押しの強さは見習う価値あり、とか、たまに自分の歳を考えるとドキッとするけどこいつらもオレより年上だし全然行けるよね、とか、当日は大地震があったのだが死んじゃったら恋愛もできないから悔いのないように生きないとなあ、とか……。


 好きな人が揃ってるせいもあるだろうが、会場は大爆笑の連続、一部悲鳴も。いい環境だった。この映画はぜひ日本公開して欲しいし、来年以降のアジアン映画祭もまた応援したいですね。

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