”燃えよ三角関係”『レクイエム 最後の銃弾』
ベニー・チャン監督作品。
麻薬取締班のマー、その部下のチャン、潜入捜査官のソーは、幼馴染の親友同士。だが、タイの麻薬王を追うために長く潜入を続けていたソーは心身共に疲弊し、強硬な捜査を続けるマーを次第に恨むようになっていた。現地での取引を抑えるため、現地に向かった三人。あと一歩のところまで迫るのだが……。
ラウ・チンワン、ニック・チョン、ルイス・クーが主演ということで、設定は同い年ということになっているが、
ラウチン→頼れるが強引すぎるパイセン
ニクチョン→気のいい弟分
ルイクー→優柔不断で裏表がある末弟
……という、まったくいつも通りのホモソーシャルパターンである。ニック・チョンを「ダニエル・ウー→クールだが才気走り過ぎる弟分」に入れ替えたら、あっという間に『盗聴犯 死のインサイダー取引』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120811/1344655574)に早変わりだ!
ダンテ・ラム監督作他、ここ数年日本公開されてきた香港ノワール路線のお約束として、これら主役キャラが容赦無くひどい目に合わされる、というお約束も踏襲。
で、まあ大変なことが起こり、
ラウチン→強引さが裏目で転落
ニクチョン→やさぐれて乱暴な犯罪者に変身
ルイクー→やさぐれて冷酷なエリートに変身
という流れまで定番という感じですね。でも、胸の内には、かつての熱い友情が燃え盛っているのだ!
ひたすらシリアスなノワールものではなく、中盤のベトナム行ってるあたりから犯罪組織の火力が増大していき、死体もどんどん積み重なる。ある意味、香港映画らしい強引な展開が重なって行って、時々リアリティ・ラインが一段下がる感覚が襲ってくる。なんだ、このワニ……えっ、この展開はありなの……?
「わははははは、そやつは影武者よ」から、主題歌のかかるクライマックス前後でさらに急降下し、ベトナムではあれだけ猛威をふるった犯罪組織の火力と物量が、逆に蹴散らされてしまうことに。
なんとなく、理想はトーさんの『ヒーロー・ネバー・ダイ』だったのではないか、という気がするが、随所に影響を感じつつ、センスが浪花節に留まっているあたり、どうも苦しい。 序盤からじわーっとトーンを変えていくあたり、ある程度計算していたのだろうが、伏線がキャラの心情的なものとストーリーは過不足なく張られたのに対して、ともすればバカバカしいまでのスタイリッシュさを担保する要素が前半になかったのはもったいなかった。お互いに車でおカマを掘り合うシーンは笑ったが、あれも前半からは想像しづらいからな。
ありかなしかというともちろんありだし、まずまず笑って見られる映画で、面白かったことは面白かった。が、まあもう一歩という感じでありました。
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