"まるで神様のバーゲンセールだな……"『インモータルズ』


 ターセム監督、最新作! 試写会にて鑑賞。


 かつて天空において戦いがあった。敗れた勢力はタイタン族と呼ばれ、地底へと封印された。勝った者たちは神々として天空へ君臨した。数千年の時が流れ、人類が繁栄したギリシャ。だが、タイタン族を甦らせ、世界を支配しようとする者が現れる……。鍵を握る弓と、その在処を知る巫女を追って、巨大な軍隊を作り上げたその男、ハイペリオン。彼を止めるために、天の神々の一人であるゼウスは、ある人間を鍛え上げていた。後の世に知られるテセウスである。


 ギリシャ神話ベースなんだが、神様がなんか知らんがお固いのだよね。人間に関わってはならん、とか妙に教条的で、その癖に言い出しっぺのゼウス様はこっそり人間であるテセウスに関わっている。ギリシャ神話は神様なのに人間を孕ませて子供作ったりが日常茶飯事で、良くも悪くも享楽的なものなのだが、今作に関わる神様は「人間に関わってる」という行為だけ残して、それが緩さゆえのものであるという内面を排除してしまっているため、展開が矛盾してしまっているのだね。
 いったいなぜ人間に関わってはいけないか、という部分で、一番えらいはずのゼウスがまずそれを破っていて、皆それを知っているのに、もっともその規範を口にするのもゼウス、ということで、なおかつその理由もよくわからない……。挙句に他の神様がそれを破ったらゼウスに殺されてしまうので驚いた。ん〜、意味が分からない。なんという命の安さ。それを悼んでみせたりするも、口だけにしか見えない。


 まあこの程度ドラマが雑なのは、実はよくあることなのだと思うが、映像の方が妙にキメキメなのも災いして、格好ばかりつけてて中身ゼロという風にどうしても見えてしまう。映像は総じて『タイタンの戦い』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100511/1273580522)なんかよりは迫力があり、独創性のある目を惹くカットも多い。衣装も予告で出て来た金ぴかよりも、普段着のような服が良かったね。バトルシーンも、神様が空飛んで来たり、超高速移動するあたりがドラゴンボールみたい。が、このあたりに力が入り過ぎて、他がスカスカになったような感もあり……。
 神々側のドラマが「介入するかしないか」なのに対し、人間側のドラマはそれと関係なく進行してしまうあたりもちょっと弱い。話をリンクさせるはずのミッキー・ロークフリーダ・ピントも神様とは直接絡まない。その人間側のストーリーも、「母の死」とか一見ドラマチックなのだが、実に記号的で「母大事」「母殺された」「怒る!」とまるでパターンを脱していないし捻りもない。せっかくの映像もカッコつけたアクションシーンばかり力が入っていて、描写としてまるで出来ていないし、登場人物の行動全てが浅い。スティーブン・ドーフのキャラクターもその象徴たるもので、女好きみたいなことを口では言うけど実際に女を口説くシーンはないなど、全てが口だけ。


 タイタン族も何か巨人的なキャラかと思ったらゴキブリみたいにちょろちょろして見えるカットがあったり、いまいち迫力がない。そしてそれと戦ってどんどんやられる神様たち……。え? 「死んだwwww よわwwwww」と思わず草を生やしてしまうぐらいビックリしたよ。「太陽神アポロ」と紹介のクレジットが出た瞬間に死んだのには驚いたな〜というか呆れたな〜。他の神様も誰が誰だかまったくわからないし……。辛うじて活躍シーンがあるポセイドンとゼウス、あと紅一点のアテナ以外、全然覚えられなかった……。


 最終的にラストバトルも神様パートと人間パートがまったく別々で、微妙な距離感を保ったまま結末を迎えるので、この乖離っぷりはもしや断絶を描くためであり、神様がバッタバッタと死んでいくのも、「神の時代の終わり」を結論づけるためかな、と想像していたのだがまったく違っていた(笑)。ラストのカットもまあカッコいいんだけど、「え? じゃあさっきまでの戦いはいったい……?」と頭を悩ましてしまったなあ。300人ぐらいいたよね(笑)。


 自ら積極的に「抱いて!」と処女(=予知能力)を捨てるフリーダ・ピント演ずるヒロインは男の理想か!?とかなんとか思いつつも、あの尻と乳は本物かダブルか、と考え込んでしまったあたりが最大の見どころ。いやね、眠かったけど寝るまい寝るまい、噂の尻のシーンまでは寝るまいと思いながら見てたので……。

ザ・フォール/落下の王国 [Blu-ray]

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タイタンの戦い [Blu-ray]

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