”新マッチョ軍団は寄せ集め?”『300 帝国の進撃』


 『300』の続編!


 300人のスパルタ戦士が戦っていたその頃、海からもペルシャの大艦隊がギリシャに迫りつつあった。守るギリシャの海軍を率いるのは、かつてペルシャの前王を射殺した英雄テミストクレス。対するはクセルクセス王をも操る、ペルシャの最強の女将軍アルテミシアであった。


 半分程は時系列が重なっていて、あの300人が戦っていた裏でもう一つの戦いがあった、という『1.5』のような体裁になっている。かつてペルシャ軍の王を射止めた英雄が、わずかな海軍を率いてペルシャ最強戦士アルテミシア率いる大艦隊を迎え撃つ……。
 もう全然300人じゃないのだが、海軍は寄せ集めで、戦士の他に民兵も動員している状態。なんだが、みんな半裸なので、誰がどれなのかよくわからん。スローと早回しを組み合わせたアクション演出にも、いい加減食傷気味。例の「300人」の共通アクションとして使うなら良かったのだが、作中でいわく、「商人や農民も混じっている」部隊で、誰が誰かもわからないキャラに使わせると価値がガタ落ちだろう。どの兵士が戦士でどの兵士が農民なのかもまったくわからんので、まるで強さが伝わらない。戦場を基本的にその手垢のついたアクションを撮るために寄って捉えているので、相手の大軍ぷりもよく見えない。船一隻ずつの上に乗ってるのは、どうせそんな大人数じゃないしな。


 かつて、『パイレーツ・オブ・カリビアン』三作目で、せっかく大艦隊が集結したのに戦ってるのは二隻だけ、という、なんともトホホなクライマックスがあったのだが、今作の艦隊戦はそれよりも随分ましで、複数vs複数の駆け引きの面白さが出ている。が、それはペルシャ大艦隊が戦力を小出しにしているためで、それをギリシャ軍が各個撃破するという構図、いかにもお話の都合だなあ。せっかくキャラを立たせようとしているアルテミシアなんだが、主人公を勝たせるために弱点だらけの設定にしているように見える。
 殺伐とした人生を送り誰も信じられず、王は自分の傀儡、部下は頼りない。だからかつてまみえた主人公を味方に引き入れたい、あるいは殺しあいたい、という欲望を抱いていて、形を変えた恋愛もののようになっているのだが、その構図のせいで、テクニカルなバトルものの面白みは随分削がれてしまっている。戦力に欠けている方を勝たせるためのエクスキューズにしかなっていない。


 主人公の人も普通のイケメンでいかにも華がなくて、今作で急に出てきた人だというのも魅力に欠ける要因。キャラ描写もどうにもメリハリに欠けていて、主人公が指揮能力に優れているということを見せたいなら、もっと部隊の兵士は頼りなく描いてもいいし、あの息子ちゃんキャラももっと弱くても良かったのではないか。普通に強いし……。主人公の強さが描かれないので、アルテミシアがなんで彼に執着するかにも説得力がなくなってくる。


 しかしまあ白人マッチョ様は、丸ごとペニスの扮装をしているようなクセルクセス王やペルシャ人の雑魚ども、同じギリシャ人でも障碍者より、あらゆる意味で強く賢く偉いのだ〜という相変わらずのひけらかしの引き立て役に、今度は女も加わったということに過ぎませんな。見事に作らんでもいい続編でありました。

300<スリーハンドレッド>~帝国の進撃~ アートブック (ShoPro Books)

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