"始まる戦い、終わらない戦い"『アンダーワールド 覚醒』


 シリーズ第4作!


 その存在を明るみに出されたヴァンパイアとライカン。人類は彼らへの大規模な掃討作戦を開始。粛清の最中、セリーンもまた死闘の末に捕らえられる。彼女が謎の研究所で、何者かによって冷凍睡眠から解放された時、すでに12年の歳月が流れていた……。


 正味な話、もう『ビギンズ』やって打ち止めかと思っておったわ〜。ストーリーは二作目より少し後から幕を開ける。セリーンが、人間によって捕らえられて12年。今までのヴァンパイアVSライカンという、中世のムードを残したクラシックな構図から、人間が絡んだ事で一気に現代劇に。三つ巴ということでややこしくなるかと思ったが、時代が一回飛んで今までの設定が半ばリセットされ、登場人物がほぼ入れ替わったことで、構図がシンプルになっている。まさに「新章」の開始だね。でも、それとなく前作までの小道具を盛り込み、つながりをアピールしている。ヴァンパイア達のシェルターの入り口の仕掛けなどは、かつての始祖たちの封印と似た作りだしね。


 人類による粛清が始まり、ヴァンパイアもライカンも次々と殺されていく。だが、そう、この女だけは簡単にはいかねえ! 暗視スコープの向こうに一瞬浮かび上がる、見慣れない(シリーズのファンにとっては見慣れた)シルエット……!処刑人であり今やデイ・ウォーカーとなったセリーンは、単身、特殊部隊を蹴散らして行く。ニュース映像交えた粛清シーンは定石通りだが、続くセリーン登場シーンにつながるつかみが素晴らしい。


 アクションも工夫を凝らしてあり、対人間はスピードとパワーで圧倒、対ライカンはテクニックと正確さで勝負。周囲の車や状況を使った殺陣も面白い。唯一の戦い方を知っているヴァンパイアということで、ほぼセリーン無双状態なのだが、中盤で巨大ライカンが立ちはだかる。いや〜、でかくて速い、銃も効かない、というあまりにわかりやすい強さ。これに小柄なセリーンがどう対抗するのか、というところも終盤の見どころに。
 3Dの使い方も、まずまず良かったですね。ハイライトは銀粉の立ちこめる中、セリーンが反撃を開始するシーン。旧作ネタと新ネタのバランスがよく、ベッキンセールさんのヌードも芸術的なまでのスモークで隠している(しかし色気がないわけではない!) 88分でシンプルながらまとまった印象。いや〜、レン・ワイズマンって、こんな手際のいい監督だったっけ? 成長したな〜と思ったら、監督変わってたけど(笑)。


 こないだ『クライング・ゲーム』で見たスティーヴン・レイが、博士役で出ておったよ。ケイト・ベッキンセールも、ちょっと歳取ったなと思いながらも、今回の「お母さん」キャラは良かったですね。マイケルは顔見せ程度で、スコット・スピードマンは出ていなかった模様。続編も作る気満々のようだが、さてどうなるか? 今回のこの内容なら、期待しても良さそうである。


 しかしこの三種族、共存の可能性など端から無視したように、お互いを憎み合ってるんですね。ハイブリッドも新たな戦いの火種になるばかり。『デイブレイカー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101211/1292031616)みたく、変に人間に戻ってしまったりするようなぬるさがないのは良い。時々「共存」ではなく「同化」を描く作品があるが、それって物凄く危険な発想なんですよねえ。