"燃えよ、愛のヘキサゴン"『画皮 あやかしの恋』


 今年もドニーイヤー! 三本目!


 盗賊に捕らえられていた美女シャオ・ウェイを助け出したワン将軍は、彼女を故郷へ連れ帰る。妻も身寄りのない彼女に同情し、シャオ・ウェイを侍女として家に住まわせることに。だが、その頃から、街の人間の心臓を抜き取る連続殺人が起きるようになる。犯人は人か? 妖魔か? 部下と共に警戒を強めるワンだが、手がかりさえつかめない。ある日、かつてワンの軍の最強の将であったパン・ヨンが去ったはずの街に戻って来る……。


 今年は『関羽』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120119/1326956879)、『捜査官X』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120326/1332734955)と、もちろん主役なんだけど物語上はピンの主人公とも言い難い作品が続いています。そして今作も妖怪と人間の三角関係の周囲をチョロチョロとアクション担当する役かな、と思っておったのですが……よく見ればクレジットはトップなのだよね。
 実は結婚前のヴィッキー・チャオとただならぬ関係で、もろに三角関係に絡む役どころだったのですね。四角関係だったのだな。さらにそこに降魔師の女の子まで絡んで五角関係にシフト! そして妖怪側にも横恋慕男が登場し、六角関係に! なんだこりゃ、怒涛の恋愛巨編か!?


 ヴィッキー・チャオとチェン・クンの夫婦と、チェン・クンを誘惑するジョウ・シュン(『酔拳 レジェンド・オブ・カンフー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110629/1309229172)の永作博美!)が主軸だが、かつてドニーさんがヴィッキー・チャオを愛していたが身を引いた、というポジションにいる。過去回想で、二人の結婚が決まった直後に単身多数の敵に無茶な戦いを挑む、というシーンがあり、まあ普通ならそこで死んでしまうのだろうが、ドニーさんだからあまりにも強過ぎて一人で勝ってしまう! その後、放浪していたがひょっこりと戻って来ると、街では連続殺人が起きていて……。
 六角関係の話だから、視点がかなり行き来するんだけれど、メインの視点はドニーさんなのだよね。彼が街に戻ったところで、回想と言う形で殺人事件が語られる。捜査するポジションとして、物語上は主役なのだ。チェン・ クンが土壇場まで優柔不断すぎて木偶の坊(まあ恋愛ものにはありがちだが)な上に、さらにメインのアクションもこなすんだから、もっと押し出されてもいいはずなんだが、宣伝は完全に妖怪の悲恋もの。うーむ、ドニーイヤーとはなんだったのだろう。


 ドニーさんとヴィッキー・チャオの関係はまるで『処刑剣』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110530/1306672092)の後日談のようなのだが、今作の方が先に作られている。こんなに絡むとは思わなかった。人間関係の変化だけでストーリーをつないでいってるので大きな筋はないのだが、すらすらと頭に入って来る。中国の永作博美ことジョウ・シュンは殊勝げな顔と悪女の側面、人間のように愛されたいと言う本心をうまく表現していて、嫉妬と愛憎に揺れるヴィッキー・チャオと張り合う勢い。降魔師役のスン・リー、格好も男っぽく非常にイモっぽいのだが、『SPIRIT』の盲目の子と『関羽』の第三夫人と全然違ってて全然気づかなかった。
 先日の『白蛇伝説』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120821/1345547619)と同じく妖怪と人間の悲恋をテーマにした映画で、内容も良く似ている。古装片ならではのアクションとビジュアルも楽しめるし、長く公開を待った甲斐がありました。

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