”生きてこそ、食べてこそ”『アンデスの聖餐』

アンデスの聖餐 (ハヤカワ文庫 NF 20)

アンデスの聖餐 (ハヤカワ文庫 NF 20)

 「ウルグアイ空軍機571便遭難事故」。アンデス山中に墜落した飛行機の事故と生存者を描いたドキュメンタリー。カナザワ映画祭にて鑑賞。


 時系列を二つにわけ、一方を当事者である学生たちの視点で事故発生前から終息まで、もう一方を事件後に現場を目指す被害者の父親の視点で描く。交互に二つの視点で、事件のあらましがリアルタイムと回想によって浮かび上がって行く。
 なぜその飛行機は飛んだのか、なぜ墜落したしたのか、どこを目指していたのか、誰が乗っていたのか、まあぼんやりとしか知らない話だったので(『生きてこそ』も観てないしな) 、そのあらましがわかって非常に勉強になってしまった。


 が、そうした最後に二つの視点が交錯することによって結末が浮上する構成を取っていることで、「あの話」が出てくるのはほんとに最後になってるんだよね。 あ〜、まだかなまだかな「あの話」は……。早く観たいぜ、あんな映像、あんな写真を! この登場の遅さは、実際の事件を全然知らない人にサプライズでも仕掛けてるのか、と思ったぐらい。そうそう、終わった後にオフ会出てた方に教えてもらったのだが、バルガス・リョサが脚本・構成だったのだね。巨匠やん(読んだことはない)。


 ……とまあそんな感じで、一番面白いところを最後まで引っ張ってたので、そこにたどり着くまでちょっとしんどかったなあ。しかし、ようやく出て来た当時の写真は……うおおおお、すげえ! なんと痛切な……! いやあ、いいものが観られました。なんというバイオレント。なんというリアルさ。グロい!


 しかしながら、この事件に対してそういう興味本位で面白がるような不謹慎な取り上げ方をしてるのが、当時の俗悪なゴシップ紙であったことが直後に語られ、気まずくなってしまったのであった。すんません、興味本位で面白がって!

生きてこそ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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