"君の瞳に宇宙が見える"『ロスト・アイズ』


 ギレルモ・デル・トロ製作のサスペンス! ……と言えば『永遠のこどもたち』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20090122/1232633590)という傑作がありましたが……。


 視力を失った女性サラの突然の自殺……。同じく視力の低下する遺伝病を抱えた双子の妹フリアは、姉の死に不可解なものを感じ、夫を説き伏せて自ら手がかりを探し始める。果たして、姉の周囲にちらつく謎の男の影……姉には付き合っていた相手がいた? だが、誰もその男の姿をはっきりとは見ていない。いったい何者なのか? 自らにも迫る失明に怯えながら、真相を追うフリア。だが、サラはすでに角膜の移植手術を受けていたことが明らかになる……。


 目が見えない、視力がなくなることを題材にしたサスペンス、ホラー作品はちょこちょこありまして、タイのホラー映画『THE EYE』、マデリン・ストウ主演の『ブリンク』、有名なところでは『レッド・ドラゴン』でもエミリー・ワトソンが盲目の女性役で出てましたね。
 登場人物は見えてない、でも観客は見える、この本来なら共感を阻む決定的な齟齬を、いかに見せるか(あるいは見せないか)、ここのトリッキーさが作り手の腕の見せ所なのであります。


 主人公は、死んだ姉と同じ病気で、徐々に視力が低下し最後は失明に至るという症状を抱えている。前半はまだ見えていて時折発作に襲われ見えにくくなる、という状態。後半では逆にほぼ視力がなくなってしまう。演技の変化を余儀なくされ、地味に大変だったと思うが、主演のベレン・ルエダ(ご存知『永遠のこどもたち』のお母さん役の人)、さすがの完成度を披露。完全に見えない双子の姉役も同時にやっているので、視力の有無に関するあらゆる段階を一人でやってみせたことになる。終盤にはもう一つ特殊な状態に陥るシーンもあり、そこも見どころ。
 演出面では、後半の失明後のシーンで主人公以外の人物をわざと顔が見えないアングルで撮影しているところが良い。観客に取っての「顔が見えない」ことに対する不安感を、主人公の「目が見えない」不安にうまくオーバーラップさせているわけだ。
 ただ、「見えない犯人」の部分はもう一つ仕掛けが欲しかったなあ。言うなれば『Xの悲劇』みたいなものこそがスマートなわけでね。ホテルでの殺しのシーンも、絵的には面白かったんだが、あれで誰も目撃してないってのはさすがに無理があるだろう。演出はおどろおどろしくて良かったが、筋的には単にミスディレクションで終わってしまっている設定も散見され、クライマックスもやや冗長になってしまった。犯人像や、その動機などには説得力を感じただけに、惜しい。


 充分面白いし、あの手この手で工夫も凝らしてあるのだが、もう一歩かっちりした完成度は感じず。かの傑作には迫れなかったな〜。


 が、そういうミステリ映画としての完成度よりも、主人公の旦那の「君の瞳に宇宙が見える」という口説き文句に、この映画の魅力は集約されているのです! こんな台詞、しらふで言えるかいな! しかも中盤、これが砂漠で星空を見上げながら言ったという内実が明らかになり、さらにラストに再度炸裂するに至り、卒倒しそうになったがな……。なんというロマンティシズム!

永遠のこどもたち [DVD]

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Xの悲劇 (角川文庫)

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