"挑め、終わりなき戦いに"『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』


 ドニー・イェンイヤー、ついに六本目! 劇場公開の最後を飾るのはあの『ドラゴン怒りの鉄拳』の続編だっ!


 1925年、上海。かつて日本軍と戦った武術家・陳真はレジスタンス活動に身を投じていた。死んだ戦友の名を使い、ナイトクラブ「カサブランカ」で日本軍の情報を集める陳真は、そこで歌うキキという名の歌手と惹かれ合うように。一方、かつての宿敵・虹口道場の新たなる当主が日本軍において実験を握り、再び中国へとやってきていた……。


 冒頭の第一次大戦中のシーンからいきなり大変だ! 武装もなしにフランス軍の荷物運びをやらされてるドニー他、中国の人たち。ドイツ軍の猛攻撃を受けてフランス軍は総崩れ、ドニーさんの仲間も一人、また一人と……。ここで怒りの鉄拳が火を噴く!(いきなり!)  いや〜、ここのアクションは正味の話、凄かった……! ダイナミズムと荒唐無稽さ、されど生身の躍動感が融合し、音楽の勇壮さと合わせ、今まで観てきたあらゆるアクションシーンの中でも、トップを争う凄さであった。ドニーつえええええ!


 人死にのシーンはかなりエモーショナルに演出されてはいるのだが、殺され方自体にはあまり時間がかけられず、悲痛ではあるものの残虐さとあっけなさが際立つように撮られている。かなりアッパーかつハードコアな内容。それに対抗するドニーもより過激に、バイオレントに、ハッタリに満ちたアクションを展開する。
 その外連味はアクションのみに止まらず、いわゆる黒い仮面の姿や、ピアノ弾くシーンなどのサービスも満載。そして拷問シーンでは……! 溜めに溜めて最後に「ついに着た!」と思わせたあの白い衣装も、じきに脱いで筋肉マンになってしまうあたりも最高だね。


 しかし、そうしてスタイリッシュなキャラクターであるにも関わらず、ドニー演じる陳真というキャラクターからは、どんなシーンでも決して悲痛さが消えないのだね。歴史を知る我々は、これからまだ二十年も日本軍の侵略が続くことも知っているし、このお話が終わっても、戦いが終わらないことはあらかじめわかっている。その中で、この主人公は名前も捨て、家族もなく、友も失い、それでも孤独に戦い続けねばならない。『ドラゴン怒りの鉄拳』と同じく、虹口道場に乗り込んだ陳真は、そこで壮絶な死闘を再び展開する。かつての激闘がフラッシュバックし、その中でかつてと同じく叫ぶ。「我々中国人は、東亜病夫ではない!」 このシーン、別に日本人によって再度、その罵倒が繰り返されたわけではないのだよね。だけど、十年の月日が流れてもやはり同じ場所で同じように日本人と戦わなければならない。自分は多くのものを失い、老いつつあるのに、これからも、あるいは永遠に……? だからこそ、かつてと同じく叫ぶことで、己を奮い立たせようとしたのではないかな。


 最後に立ちはだかる敵は、かつての怨敵の息子。ここで回想シーンで倒される父親を、倉田保昭が演じていて、ほんとに数秒の出番! うわっ、少ない! でもここで倒されるのが、わずか数瞬の出番とは言え名もない役者だと、重みが出ないのだよねえ。ここはむしろこの数秒のために倉田さんを! なんと贅沢な使い方だ! という捉え方をしたい。
 血縁、因縁のある敵が出て来ると、どうしても過去を想起せざるを得ないし、その復讐心が強さの表現ともなる。その強さをも主人公は凌駕しなければならないし、これを打ち倒しても必ずや次の復讐者が現れるであろうことを、否応なく考えざるを得ない。最後に佇む仮面の戦士の姿には、孤独とそれでも戦い続ける悲痛なまでの意志を感じた。


 前作や、当時の中国の置かれている状況などを踏まえて観ないと、ちょっとわかりにくくもある。市井の一武術家であった主人公が、10年近い歳月を戦い続けたことで活動家的な立ち位置になっていて、そのことを表現するためにはどうしても史劇的なテイストを帯びる必要があるのだが、さすがにちょっと中盤の演出がダイジェスト的すぎたかな。有力者の将軍役のショーン・ユーもちょい役すぎたし、なぜか日本人役のあの人が不自然過ぎるし……。いささか悲哀が伝わり切らない内容で、惜しかった。


 最初と最後のアクションで充分に楽しめるのだが、傑作とはちょっと言えないかな〜。とはいえ、『イップマン』とテイストの違いなど比べながら観ても面白いし、どこまでもブルース・リーにこだわり続けてきたドニーの歴史の中では重要な作品。そして、もっとも正しくEXILEを使った映画でもあるな。あんなロン毛どもは、あれぐらいの扱いでちょうどいいんだよ!

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