"お得な串団子セットですよ"『インシディアス』


 ジェームズ・ワン監督他、『ソウ』シリーズと『パラノーマル・アクティビティ』シリーズの製作陣が集まって作ったホラー。


 ジョシュとルネの夫婦は、三人の子供たちと共に新居に引っ越して来る。だが、ある日、屋根裏に上った長男のダルトンが謎の昏睡状態に陥る。その頃から頻発し始めた、怪現象……。この家には何かが潜んでいる? 怯えるルネの訴えに苛立ちながらも、ついに引っ越しを決めるジョシュ。だが、災いはなおも彼らに襲いかかる……!


 観たらほんとに「このスタッフが集まったらこうなっちゃいました〜」というぐらいに寄せ集めな内容だったのでビックリしたなあ。カメラのない『パラノーマル・アクティビティ』から今風な『ポルターガイスト』に雪崩れ込み、最後は『デッド・サイレンス』ごっこで締める、という素晴らしく志の感じられないホラー。途中でガラリガラリとテイストが変わるし、ある意味、飽きている暇はない。その点ではシリーズを重ね過ぎた『ソウ』や、一本でもちょっと途中で飽きて来る『パラノーマル』の反省を踏まえ、改良したと言って……いいわけないだろ!
 妻が主役のように始まって、旦那に交代する構成など、ほんとに序〜中〜終盤と違う話になっているのだが、一応これは確信犯的なものだよな。意図的にネタ三つぶっ込んで串団子にして一本の映画にしてしまおう、ということで。問題はそれの是非なわけですが、意図的なんだからこれを「とっ散らかった」と評するのはやや的外れであって、問われるのはなんでわざわざこんな構成にしたのか、ということであろう。 だが、急激な路線の転換によって、妻が作曲やってるという設定がどっかへ消えたり、子供の数が死んでもいないのに二人減ってしまうなど、作中の都合による省略がひどい。もちろん答えは「それしかできないから」であって、もう才能の枯渇した人たちが寄せ集まっても同じものしか作れない、という典型のような作品であった。


 タイムラインに「ダース・モール出てきた!」と書いてあったので、「ん? レイ・パーク出てるの?」と思ったら、ほんとにダース・モールだったんですな。あと『デッド・サイレンス』のババア。えっ、いや、どっちも違うキャラなんだけど……じゃあなんでこんなに似てるんだよ! 最初にこのダース・モールが出た時点で真面目に観る事を放棄すれば、まあそれなりに楽しめるかもしれない。最後の方の展開は結構笑えるしな。しかし、キーワードになる台詞がダース・モールなのかメアリー・ショウなのか不明瞭だったり、詰めのところも甘くて『デッド・サイレンス』の腑に落ちる感覚も再現できていない。


 ローズ・バーンは今回のヒロインということで、観ながら誰か思い出すな、と思っていたのだが、ジェニファー・コネリーを貧相にしてジェシカ・ハーパーを普通の人にしたような風貌なのだね(ごめん、全然褒めてない)。気弱げな眉毛がこういうジャンルの映画にはまる。後半は主役になるパトリック・ウィルソン(『ハードキャンディ』でエレン・ペイジにいたぶられてた人)も、相変わらず何かが足りない男前ですな。あとはリー・ワネルが自ら出てるのが面白かった。最初のクレジットで、脚本家なのに変なタイミングで出るな、と思ってたら出演してたのか……。


 まあ何も期待せずに安く観られればちょうどいいかも。しかしこれを観るくらいなら、とりあえず『永遠のこどもたち』100回ぐらい観たいよ。霊媒のシーン一つ比べるだけでもう違いすぎるから。

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