生き残りか? 成り上がりか? 今年のK-1WGP開幕戦について

必死こいて予選を勝ち上がる
→開幕戦出場
→つまんなくてもなんでもいいからとにかく勝つ
→決勝戦進出
→来年は予選免除でいきなり開幕戦

 もう皆さんご存じだろうが、この開幕戦に勝つか負けるかで、各選手の翌年以降の扱いがまったく違ってくる。予選を勝ち抜きながらも、一度もベスト8に進めず足踏みを続ける選手。一度はベスト8に入りながらも、開幕戦で不覚を取り、再び予選に挑む中輝きを失っていく選手。ある意味、決勝トーナメントで勝つこと以上の価値が、この開幕戦にはある。
 ここで勝てば翌年は一試合が保証され、運頼みの過酷なトーナメントで肉体を磨り減らすことなく、ワンマッチでその大事な試合に向けて調整できる。再びそこで一つ勝てば、また来年の「仕事」は保証されるのだ。

 人気があれば、与し易い相手が用意されるかもしれない。だが、そこでの慢心こそが命取りだ。中量級の噛ませ犬をなめ切って出てきた挙げ句に翻弄されて消えたイグナショフのように……。

 ベスト8! その成績以上に重要な意味を持つ一つの勝利。生き残るか、成り上がるか、真のサバイバルマッチはここにある。

 人気blogランキング参加しています。
 よろしければ御協力下さい。

 予選を二度制し、今年もぎりぎりで推薦枠を勝ち取ったスロウィンスキーが、レミーとの対決。厳しい……グラウベシュルト、レミー……今現在のランキングでも、おおよそ5位、1位、3位の相手と、毎年の開幕戦で戦っているわけだ。スロウィンスキーが
正面から競り合って負けたグラウベに、レミーは同じく正面からぶつかって勝っている。スタイルを考えても、安定したタイプ同士だけに実力差がもろに出そうだ。
 ここで負けたらまた予選……三度目の正直は……厳しいだろうなあ。

 予選二度目を制したカラエフは、推薦のハリッドと激突。ともにベスト8経験者、だが、カラエフは昨年開幕戦戦わずして消え、ハリッドはグラウベに食い下がりながらも敗北。一人は厳しい戦いを這い上がり、一人は棚ぼた的に再びこの舞台に上がってきた。その差は、果たして出るかな?
 圧倒的な攻撃力をさらに進化させたカラエフだが、はたしてディフェンス能力はどうか? もし以前のままならば、タフネスで勝るハリッドが有利だろう。つべこべ言わず殴り合うような戦いを見たいが、カラエフは蹴りでいくのもありかなあ。

 推薦枠残り二人、セフォーと武蔵は、それぞれ予選を勝ちあがったサキ、テイシェイラと激突。まともに勝ってもいないのに、開幕戦出られていいなあ、と思う向きもあるかもしれない。

 だが……逆だっ! この人気にあぐらをかく姿勢こそが、この二人が勝てなくなった原因だ。

 どうせまた推薦で出られる、という腑抜けた気持ちが、セフォーに昨年の開幕戦、あのような惨敗を喫させた。体調不良、相手はアーツ……負けてもまたファン投票で出られるし……。勝てば一気に挽回できるシュルト戦、ハリ戦でこそ目の色が変わったものの、セフォーはもうWGPの優勝などあきらめているだろう。もはやただ出ているだけだ。だからこそ、シュルトにもハリにも勝てなかった。そのセフォーをおそらく研究しつくして出てくるであろう GGの新鋭は、成り上がりを賭けて勝負に挑んでくるだろう。老兵侮りがたし……セフォーがそんな気概を見せることを期待するファンも多いだろう。だが、老いたとしても果たして未だに彼が「兵」(つわもの)であるか否か……それはもう本当に、残酷なまでにリング上で示されるに違いない。
 澤屋敷をワンマッチで倒した武蔵もまた、そういった慢心に支配された一人ではないか。あの勝利の時点で、推薦枠という計算が彼の中に成り立っていてもおかしくない。膝を痛めたまま日本予選に出場、という話は美談に仕立て上げられたが、これも逆に取れば、負けても推薦があるだろう、という意識が働いてのことかもしれない。
 武蔵はセフォーよりも「こすい」だろうし、勝利への執着心も人一倍だろう。ルーキー・テイシェイラ相手に、確実に勝ちにくるに違いない。極真の新鋭は、それに対してポテンシャルを発揮できるか? ここでもまた、衰えつつある帝王の執念を、次回の極真世界大会へのステップを兼ねたチャレンジという動機でテイシェイラが乗り越えられるかどうか?というところが注目点となる。

 その点、バンナというのは何か不器用というか、保身のチャンスにおいても上手く立ち回れないイメージがあるなあ。やはりそれは試合の中でも、もっと楽にポイントを取れそうな局面でも真っ向勝負を仕掛けたり、開幕戦とか全然関係ない日程でも負傷を押して出場したりという行動が、そういうイメージを作るのだろ か。
 そんな中、映画撮影の最中、脚を負傷しながらも対戦したルーキーに、彼はマットに這いつくばらされた。バンナの価値を地の底まで叩き落とした怨敵との再戦のチャンス。
 もし、「勝てばベスト8」などと星勘定を考えているようなら、澤屋敷は勝てないだろう。アーツに壁の高さを見せつけられ、今年も二連敗。まだ何も為していない男が、映画出演などおこがましい限り。対照的に、来年に二本の映画の契約を結んだというバンナは、そろそろ「上がり」を意識している。あるいは今年が最後となるかもしれない。リベンジを果たし、最後の花道へ……かくも純粋な闘志をバンナが持っているならば……出場辞退の勧告を「もったいないから」という理由で蹴ったのなら、澤屋敷は叩き潰される。だが、このバンナの変わることのない「挑戦」の精神を受け止めて凌駕しようという気構えがあるならば、あるいは……。
 そのためには、澤屋敷は「下がって下がって下がりまくる」べきだ。いかなる批判を受けようと、バンナに同じ悪夢を見させる覚悟が必要だ。そして、おそらくそれを飲み込むために完全なコンディションで来るであろうバンナを、いかなる手でもいいからもう一歩上回る。それだけの執念を澤屋敷は持てるかどうか? 今年どん底をのぞいたからこそ、あるいはなし得るかもしれない。

 グラウベVSジマーマンは、なんか余ったから組んだようなカードだなあ。ここでもハリに叩きのめされたグラウベの復活に賭ける思いと、成り上がりを目指すジマーマンのチャレンジスピリットの激突がテーマになるが、いささか開幕戦全体の中で見ると、薄い印象が否めない。もっとも、そういう試合が一番盛り上がったりするんだけど……。

 セフォーグラウベを撫で斬りにしたバダ・ハリが、復帰直後のホンマンを迎え撃つ。こないだはあわやダブルノックアウトだったが、あれがバダ・ハリから油断の二文字を消し去ったとすれば、もはや死角はあるまい。アウトボクシングに徹すれば、何もできないままホンマンはジャブとローを浴び続け、試合終了のゴングを聞くだろう。危ないとすれば、KOに色気を出した場合だが……。今年、衝撃KOを二つ演じてみせたハリには、ここで「固い試合」をやるだけの貯金がある。シュルト戦へ試運転……そんな計算もあるかもしれない。
 しかしながら、「固さ」ではハリはレミーやシュルトには絶対に勝てない。やはりここは三連続KOの「勢い」を維持することを考えてほしいな。

 残念ながら推薦からもれたサメドフは、オープニングファイト。まあ彼からすれば、実質的なリザーバーとして、誰か欠場者が出るか祈るのみだろう。同じく、僕が前田憲作ならば、澤屋敷のセコンドとして前田慶次郎を必ず帯同するように取りはからうね。これだけで、チャンスがあれば次のリザーバーの位置を確保できる。

 さああと三週間……。幾多の思惑を孕んで、その時はやってくる。下克上なるか。世代交代完了か。巨人の時代は終焉の日を迎えるか……?

 人気blogランキング参加しています。
 よろしければ御協力下さい。