2008/7/21 DREAM5観戦記
いや〜、大阪は灼熱地獄のような暑さですよ、皆さん。
しかしながら、吸血鬼のような色白の優男である僕が、実は夏男であるという意外な事実。人は見かけでは判断できんのだよ、きみぃ。そんなわけで、仕事後に自転車を飛ばして、大阪城ホールまで行ってきました。2006年K-1開幕戦以来ですね。
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時間より10分押しで開場し、わっせわっせと入場し、水だけ買って席についた僕。まあ座席表で確認してたんだが、角度、距離ともに実にまあまあな席だった……。左隣は和歌山からきた親子で、右は一人で来てる格オタ。まあ心配しなくても、PRIDE系のイベントは、うまく盛り上がればみんな演出と試合に集中してくれるから、マナーに関してはよっぽどのことでもないと気にならない。その点、ダイナマイトはひどいね……。
話がずれた。相変わらず秋山をネタにして笑いをとるオープニングの後、試合開始。
<第1試合 特別ルール 5分2R>
アンディ・オロゴン(フリー)
中村大介(U−FILE CAMP)
道着着て入場のオロゴン。まあ前座試合としては相応しいか。煽りも適当な造りで、いかにも緊急決定カードらしい。
ローの打ち合いから、パンチで飛び込むオロゴンを、距離を取ってかわす中村。何か狙ってる雰囲気だったが、ワンツーで入った腕を手繰って、そのまま飛びつき腕十字。オロゴン、光速でタップ。
この組み合わせ、この状況で、どうやってちょっとでも盛り上げるか考えた中村のプロ意識が光った一戦。主催者はもっと考えろよ。
<第2試合 ライト級トーナメント準決勝 1R10分・2R5分>
青木真也(パラエストラ東京)
宇野 薫(和術慧舟會東京本部)
さあ、いよいよ今日のメインがいきなりスタート。おおおおお〜、これが青木のバカサバイバーか。盛り上がるぜ!
おなじみリングで寝転がる宇野も気合十分。
ローキックから入る宇野、しかし青木もすっと入って組んでいく。そして永田をひっくり返した柔道風の崩しから、一気にマウント。だがさすがに宇野もここはガードに戻す。
しかし青木が止まらない! 腕、足と次々に狙いを変えながら、宇野が動くたびにサイド、バックを奪い、全ての攻めをつなげてペースを取り、宇野に何もさせない。
1ラウンド終盤、三角が入ったかと思われたが、宇野が辛うじてここは抜く。
2ラウンドに入っても、青木の攻めは容赦なく、宇野はガードに戻した直後の単独のパウンドしか攻め手がなく、何もできない。
何もさせてもらえず、丸裸にされたHEROSのプリンスは、ゴングが鳴った直後にうなだれた。恐るべし、最先端の寝技。パイオニアは全てのテクニックを否定され……いや、宇野逃げがあったからこそ判定まで凌げたのだろうか。
倒したところから寝技地獄が始まり、いいポジションを取ったまま相手が動くのを待ち、動いたところでさらに良いポジションを奪い、ポイントを取りながら一本を常に狙い続ける完璧なスタイル。やはり最先端!
これで、古き良き総合が、まずは一つ消えた。
<第3試合 ライト級トーナメント準決勝 1R10分・2R5分>
エディ・アルバレス(エリートXC/ファイト・ファクトリー)
川尻達也(T−BLOOD)
青木VS宇野の寝技対決と対照的に、ここはバチバチの殴り合いを期待!
頭を振ってステップを踏みながら右を伸ばすアルバレス、しかし川尻も相当研究してきたか、伸びる右からは距離を取り、ローキックを合わせる。タックルもがっちり切って組みとめる。お互いの拳が交錯し、ひやりとする瞬間が幾度も訪れる。川尻は右に合わせるカウンターも狙っているか?
しかしパンチの交錯から、最初にダウンを奪われたのは川尻! だが追撃は凌ぎ、再びスタンドに戻す。
ここでドクターチェック。攻めていたアルバレスだが、川尻のパンチでか、眉の上が切れたようだ。
再開後もいけいけのアルバレスだが、今度は川尻もカウンターを合わせ、逆にアルバレスに膝をつかせる。タックルでごまかすアルバレスだが、頭を下げたところに膝を狙う川尻。いやあ、戦術が見えていいね。しかし、ダメージはどうなったのか、回復したアルバレスが再びラッシュ。効いてないのか? が、再度川尻がカウンターを合わせて倒し、得意の上を取るガードポジションに。ここから鉄槌連打か? さらにマウント。が、ここもアルバレスが突き放し、スタンドに戻す。
大熱戦となったが、なおもペースを変えずに襲いかかるアルバレス。川尻もパンチを交錯させ、メレンデス戦を彷彿とさせる打ち合いに場内大熱狂。
しかし最後の応酬で打ち勝ったのはアルバレス! ストレートとアッパーに打ち抜かれ、タフな川尻が完全に効いた状態で、アルバレスの脚にしがみつくようにうつぶせに突っ伏した。顔からマットに突っ込んで、完全に終わっていたんだが、レフェリーがなぜか止めない(笑)。アルバレスが両手を上げて「終わりだろ?」とアピールする間に、朦朧とした意識で猪木アリに戻す川尻。しかし、仕方なく鉄槌に行ったアルバレスがサイドについても、ほとんど反応できない。何発追い打ちを落としたのか、ようやく試合が止められた。
あ〜あ〜やっちゃったなあ、PRIDEクオリティ。ストップ遅すぎ。VTRが「フィニッシュ手前」のパンチなのが、ストップの遅さを如実にあらわしてるな。
激しい打ち合いながら、パンチテクで勝ったアルバレスの勝利。川尻も研究の成果か勝機はあったし、惜しかった。しかしながら、イケメンで細い顔のアルバレスの方が無骨な川尻よりもフィジカルが上というのは、釈然としないねえ(笑)。
北米最先端が勝利し、これで決勝はアルバレスVS青木!
<第4試合 ライト級トーナメント リザーブマッチ>
ヨアキム・ハンセン(フロントライン・アカデミー)
ブラックマンバ(フリー)
強烈なローを飛ばすマンバ。ハンセンのローも悪くないんだが威力ではやはり上か。ハンセンが詰めたところに、首相撲からの膝も見舞う。しかししつこく寝技狙いのハンセンは、コーナー際で腕十字。ちょっと半端な入り方だったのだが、マンバがタップ。
ああ〜やっぱり実力差あったね。諦め早い悪いときのマンバが出た。
ここでマイク。ハンセンすっかり人気者だな……日本大好きです、いつもありがとうという当たり前のコメントだが、大歓声。
<第5試合 フェザー級 ワンマッチ>
ジョセフ・ベナビデス(アルティメット・フィットネスジム)
KODO(シューティングジム神戸)
プレッシャーをかけて組み付き、軽々と持ち上げるベナビデス。いやあ、この持ち上げる速さも倍速で、さすがフェザー級。KODOは得意の打撃も出ず、ガードで凌ぐばかり。叩きつけられたKODOはそのままチョークに捉えられ、緊急オファーお疲れさまでした。
ベナビデスはマイク。嗚呼……KIDが出てればなあ……さぞ面白い試合になったろうに。
<第6試合 ウェルター級 ワンマッチ>
宮澤元樹(和術慧舟會東京本部)
弘中邦佳(Academia AZ)
宮澤が思い切りのいいパンチで入っていき、飛びついて引き込みを狙うが弘中は倒れない。普通にスローな展開に、会場から野次が飛ぶ。弘中がコンパクトなパンチで宮澤の出足を止めていくが、会場からは「越中!」と野次。つまんねえ。
弘中がパンチでドクターチェックを呼び込むが、なぜか弘中も反撃を浴びてドクターチェック。場内失笑。
勝ったのは弘中だったが、何が悪いのか終始低調な内容だった。こんなんでウェルターは大丈夫なのか?
ここで休憩。場内は冷房効いてて気持ちよかです。客入りは、アリーナもスタンドもまばらに空いている状態で、満席には届かず。それでも8割ぐらいは埋まってるかな?
前の席で、黄色いTシャツの格オタ系の兄ちゃんがデジカメを構えたから、何だ?と思ったら、隣のカップルの写真を撮ってあげている。おいおい、カップルうざいよ。一人で来てるオタに写真なんか頼んで見せつけやがって、いい気になってるんじゃないよ。オレならそのデジカメ、アリーナに投げてるよ……とまあ、実に心の狭い僕でした。
冗談ですよ?
さて、休憩の間、アリーナを眺めてると……ん? 真ん中らへんに座ってる、あのドレッドヘアの巨大な黒人……あれ、カリームじゃねえ? おもわずまじまじと見てしまった。
説明しよう、カリーム・シュガーベア・バイロン……うちのジムに来ている総合格闘家である。190センチ、150キロ、まあどこにいても目立つ。大阪城ホールでも目立つ。わはははは、証拠写真撮っておいてやろう。
ちなみに今日はうちのジムのインストラクター原田さんのプロデビュー戦がアゼリア大正であったのだが、オレとカリームはそれを裏切ってDREAMに来てしまっているわけだ。すいませんねえw
さて、休憩は15分ぐらいのはずだったのだが……長い……十分オーバー……こりゃなんかあったか? 所がまた急に腰痛くなったとか……?
<第7試合 フェザー級 ワンマッチ>
所 英男(チームゼスト)
山崎 剛(GRABAKA)
その所は普通に出てきました。
打撃が伸びる所、右ストレートがまともに入り、山崎はほとんど後ろを向いて崩れる。所はかなり打撃を磨いてきたようで、マンバばりの合わせる膝も出し、ハイキックも狙う。しかしローキックが山崎の金玉を蹴り上げ、再開後ももう一発。精度はまだまだか? 寝技で優位に立てず、打撃では圧倒された山崎は、後半はポジションを取り返したものの、ポイントにつながる攻めはできず。
<第8試合 ミドル級 ワンマッチ>
秋山成勲(フリー)
柴田勝頼(ARMS)
もう完全にネタ扱いの秋山に、温かいブーイングが飛び、柴田にはお約束の大歓声。この大して悪意もないのに、場の雰囲気だけで本気じゃない野次やブーイングを飛ばすってのは、まったくイジメの構造と同じでオレは嫌いだね。それを煽るVも、煽られてる奴らも等しくキモい。今もまだ、本気で義憤を感じてる人間なんていますか?
ブーイングを聞いちゃいねえのか、ほんとはむかついてるのか知らないが、秋山は平然と入場。そして、今日はテレビガイドのロゴが入った柔道着を着たまま。
パンチを狙う秋山だが、おしゃれさんなのか、柔道着をいちいち直す仕草がうざい。柴田も踏みこまないので、なかなか期待の打撃戦にはならず。しかしハイキックを空振りしたところで組み付いてきた柴田を倒し、そのままマウントから袖車に以降。柴田は耐えていたが、ついに失神。まあこんなもんでしょう。
最後は拍手の方がブーイングよりもちょっと増え、秋山的にはちょっと満足な展開だったかな?
韓国で人気で完全に調子に乗っている秋山がうざい、というのは本当で、やはりリングで強い人間と戦って粉砕されてほしいわけで、こんな口だけの相手しか当てられないってのはやはり主催者が無能なんだよなあ。まあ9月と年末に期待か……。
ここで島田ルールディレクターが登場し……あ〜あ、嫌な予感が当たった。
アルバレス、眼球損傷と眼窩底骨折でドクターストップ。確かに眼の腫れがひどく、こりゃあとても無理だ。
声を詰まらせながらマイクで詫びるアルバレス。しかし場内からはあくまで暖かい拍手が。
リザーブの権利は、川尻がTKOなのでハンセンに。
「青木かハンセンには、最初のタイトルマッチに僕の挑戦を受けて欲しい」
そう言い残したアルバレスは、コーナーによじ登り……え? え? マジで? やんの? なんとここでお家芸、ムーンサルト。もう場内大拍手。大丈夫なのか、眼は……。川尻もただでは殺られず、眼一つは持っていったわけだが、やはり敵う相手じゃなかったな……。スケールが違い過ぎた。
<第9試合 ヘビー級 ワンマッチ>
マーク・ハント(オシアナスーパーファイタージム)
アリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデン・グローリー)
アリスターの彼女は……何というか……。
倒して上を取ったハントだが、下から腕を狙うアリスター。でかいんですが器用に手繰り……クラッチは外れてないのにアームロックに移行、一気にタップを奪う!
ハントよええーっ! ジョシュ戦ばりにあっさりひねられて、全然進歩してないじゃん。K-1の優勝も過去の栄光だし、これでバンナ戦とか言われても、総合に適応してないもの同士の迷カードでしかないなあ。
アリスターは逆にミルコ戦をがっちりつかんだか? まあ最近の何をしたいのかわからないミルコなんて、見てもしようがないが……。
<第10試合 ライト級トーナメント決勝 1R10分・2R5分>
青木真也(パラエストラ東京)
ヨアキム・ハンセン(フロントライン・アカデミー)
なんと、ここでまさかの男祭りのリベンジマッチ。前回は青木が三角で、北欧の処刑人を絞首刑に処し、その実力を満天下に知らしめた。カルバン、宇野を飲み込み、その最先端の寝技の完成度はさらに上がっている。今日の出来も完璧で、宇野戦もダメージなし。休養も充分。これは青木の圧勝で、この決勝も寝技地獄で決まりだろう。
パンチを狙うハンセンに、組み付いて倒す青木。ほーら、始まったよ。ハンセンは組まれて……動かない。小さなパンチだけ打って動かず。そして青木も動かない……ハンセンが動かないから、自分も動けない。宇野は動かした、あるいは動いたところを利用していい形を取ったが、ハンセンは膠着覚悟で誘いに乗らない。普通ならブレイクを掛けるところだが、明らかに動きがないのにレフェリーは分けない。裏読みするならば、このグラウンド状態は「青木に有利な状態」だからではないか? ハンセンが突き放し際に金的を蹴り上げ、タイムストップ。
今度は引き込む青木。得意のラバーガードに持ち込む。これは男祭りの再現か?
自ら仕掛ける青木だが、ここでハンセンもパウンドを打ち返す。ん? 今、青木、ガクッてならなかった? 2発、3発……しがみつく青木。ああ、まだ大丈夫か。さっきのは見間違いだったかな……? しかしハンセン、突き放してさらにパウンド、あれ? 青木、全然、力入ってなくねえ? パウンドを浴び続ける青木……えええ? あれあれあれ? 背けた顔を庇うようにしていた青木の手が、やがて助けを求めるかのようにマットに向けて伸びる……! えええええええーっ!?
青木よええーっ! 最先端の柔術も糞もなく、一見なんでもないパウンドで処刑! 場内はまさかの展開に大爆発。前の席の二人、青木ファンだったらしく呆然。いや、オレも宇野戦を見る限りは「無敵か? 異形の天才、日本を背負って立つ」という見出しまで考えたぐらいだが……。
いやあ、まあハンセンが上手く、そして強かった……そういうことなんでしょうが、男祭りの印象があったから、まさかまさかという感じでした。こうなると、あの時勝ったのも「73キロ」のせいか?という気さえしてしまうね。
それにしても青木はメインに弱いなあ……。地上波で放映される決勝戦、最高の舞台でまさかのリザーバーとはいえ一度勝った相手に、リベンジを許した上に力なく撲殺される。九分九厘までつかんだはずのスターダムが、またしてもすり抜けていった。ほとんど試合後のインタビューまで考えてたんじゃね?
代わりに頂点に立ったのは、北欧からやって来て、長く日本で戦い続けた苦労人! リング上では気の効いた台詞も思いつかず、しかし最初の防衛戦の相手にアルバレスを指名! 今年最高の名勝負と言われたあの対戦が、まさに事実上の決勝戦であったことが証明され、さらにタイトルを賭けて大晦日に再戦されるであろうという最高の流れが生まれた。
いやあ、素晴らしかった。格闘技に作られたヒーローなんていらない。この予定調和の破壊こそが最高の魅力なんだということを、改めて再確認しましたね。
閉会式、なんと三位や準優勝まで「おめでとうございます! コメントお願いします」というグダグダっぷり。なにがおめでとうだよ。彼らは今日、人生全てが否定されるようなものすごい屈辱を味わったんだよ? 悔しそうな宇野、すすり泣いてる川尻と青木がさらし者になってるようで、どうも乗れない。敗北者は去れ。スポットが当たるのは勝者だけでいい。今日の二人の勝者、ハンセンとアルバレスの二人だけで充分だ。敗者にはまた這い上がる機会が与えられる。それでいいではないか。
会場も大盛り上がり、結末も最高で、いい気分で家路につきました。おめでとう、ハンセン! 次も応援するよ!
さて、次は6だな……ディアス兄貴を応援しよう……出るのか?
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