”蜘蛛と鳥と”『スパイダーマン ホームカミング』


Marvel 映画「スパイダーマン ホームカミング」日本版予告 第3弾 Another Cut Ver.

 スパイダーマンがまたもリブート!

 トニー・スタークにもらった高性能スーツをまとったスパイダーマンは、今日も学業と街の平和を守る活動を兼業中。アベンジャーズに入りたいスパイダーマンを、トニーはまだやるべきことがあるとたしなめる。そんなある日、巨大な翼を持った怪人と謎の武器取引を目撃した彼は……。

 『シビル・ウォー』でマーベルに復帰を果たしたスパイダーマンが、単独作品として参戦。サブタイトルのホームカミングとは、高校の卒業生が母校に帰省するのに合わせて、パートナーを誘ってダンスパーティをするという、プロムとはまた別のイベントだそうで、これは死ぬな……。
 主演はトム・ホランド君。実年齢はティーンでこそないが、割合さっさと高校を卒業してしまったトビー・マグワイア、若干老けた高校生に見えてたアンドリュー・ガーフィールドに比べると随分フレッシュに感じる。

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 メリー・ジェーンもグウェン・ステイシーも登場しないので、学校での人間関係は部活中心。南米系、アフリカ系、インド系など人種が入り乱れる学校内の描写はなかなか新鮮で、ピーター・パーカーが気になってる女の子リズも一つ年上でローラ・ハリアー演ずるアフリカ系。トムホより大きい!
 真っ先にスパイダーマンの正体を知ってしまうデブことネッドも面白いが、『グランド・ブダペスト・ホテル』のベルボーイのインド系少年も嫌な奴で良い。あまりにイライラさせてくれるのでつい「シャマラン」と呼んでしまった。

 お話は『シビル・ウォー』の後になっていて、アベンジャーズレベルでは引っ越しやってるぐらいで閑話休題中。だが、トニーのせいで仕事を失ったマイケル・キートンことバルチャーが、世界各地でチタウリやウルトロンの残したテクノロジーをかき集めて武器として売りさばいている。ご近所の平和を守る中、偶然にもその武器と一戦交えたスパイダーマンが、バルチャーと対決することに……。

 もはやすっかりおなじみのスタークの官民癒着だが、中小企業のフォローをしてなかったせいで恨みを買ってしまっている。翼を持ったスーツを装着するバルチャーは、廃工場をアジトに小さな商売を手作りでやってスーツも自作、ということで、アイアンマンの中小企業版コピーのような存在に。言うなればアイアンマンの影であり、そのバルチャーことマイケル・キートンと対決するのがスパイダーマンということで、無駄なしわ寄せを食ってるなあという気がしないでもない。
 が、お話が進むにつれ、家族と地元の平和のために戦うスパイダーマンと、同じく家族を持ち身近な妻子のために悪事を働くバルチャーもまた光と影であり、大人であるバルチャーに対してそうなりきれていないスパイダーマンが、その面では正負が入れ替わっているかのようにも見える。

 高校生活とスパイダーマンとしての仕事のギャップ、そこからアベンジャーズに加わるにはいかにすればいいのか……という葛藤が、バルチャーという具体的な難題として突きつけられる。終盤に明らかになる人間関係の複雑さは、それに単純な解答はなく、力に伴う責任と代償を我々に教えてくれるのである。
 うーん、終わってみるとなかなかスパイダーマンらしい話であったな。一応恋愛要素はあるが、MJとの物語だったライミ版、グウェンとの物語だったアメイジングに対して、あくまで軽くまとめたのも差異化としていいんじゃないか。
 ただ、ジョン・ワッツの特性か、大人と子供の対比を俯瞰でやるのが、少々客観的すぎるのかもしれないな、という気がする。高校生の恋愛とか、麻疹ぐらいにしか思ってないだろ……。事実はそうなのかもしれないが、それを超えたキモさとか情念が立ち上ってくるのが、過去シリーズそれぞれの面白いところでもあるんでな……。

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 スパイダーマンとしてのオリジンをばっさりカットし、蜘蛛に噛まれたくだりやベンおじさんの死などは台詞でさらっと語られるのみ。まあ今後機会があれば、回想でやればいいんじゃないの。トム・ホランドはベンおじさんはトビー・マグワイアにやってほしい!と言ってたそうで、それはちょっと見たいな……。