”縦移動は大変です”『海底47m』


『海底47m』予告編

 サメ映画!

 休暇を過ごすケイトとリサの姉妹。ホオジロザメを間近で観られるツアーに誘われた二人だが、姉のリサは渋るものの冒険心の強いケイトに引っ張られ、とうとう参加することに。だが、鮫を観ている最中にケーブルが故障し……。

 舞台はメキシコ。海中に檻を吊るしてその中からサメを鑑賞しようという、違法ツアーに参加した観光客の姉妹。姉は男にフラれたばかりで、活動的な妹に対してコンプレックスを抱いているという設定があり、裏の面として無鉄砲な妹に乗せられ、いやだ、危ないと思いつつもサメの檻へ……。
 現地のクラブでナンパした男に誘われてのツアーで、船はボロいし、やってるスタッフの男たちは何か胡散臭いし、これ大丈夫なの……?と思うのだが、先に檻に入った男たちはまったく大丈夫だし、やめておく確たる理由も見出せないまま海中へ。

 人間の危険感知能力というのはなかなか大したものなんじゃないか、ということを常々考えるが、やっぱり危ないものは危ないのである。案の定、5分も経たないところでワイヤーがぶっちぎれ、檻は海底へ……。
 ミスディレクションとして、ツアーやってる人たちがいかにも怪しげで、何か企んでそうに見える意味ありげなカットを挟んでるのだが、実際は何もないのだな。普通に助けようとしてくれるし、逃げもしないし隠蔽の意図もない。全然悪人ではない。ただ単に、整備がいい加減で適当な性格をしてたというだけで……。

 沈んじゃった序盤はダイビング経験のある妹がリードするが、動き回ったおかげで先に酸素切れを起こし、頼りなかった姉が奮起するという流れ。
 酸素の残量の問題に加え、無線は海底47mでは範囲外、30m以上に急浮上すれば潜水病になる、と縛りが多すぎ、なおかつ法律で禁止の撒き餌で寄ってきたサメがウロウロ……。二本目の酸素ボンベを使うと窒素酔いを起こすかもしれないから、ギリギリまで頑張れ!とか言われてなかなかつらい。

 海に入る人が少ないので、サメに食われて死ぬ人も少ない。さらに、人が死ぬシーンもはっきり見せないのだな。予算がないのか、とも思うが、実はそこにまた仕掛けがほどこされているので、まあいいか……。

 『ロスト・バケーション』が岩礁からビーチという短い距離の横移動を描いた映画だったが、今作は同じようなシチュエーションながら縦移動。こうやって見ると、人間の機動力ってのは情けないほどに低いのだなあ、と実感させられますね。サメも本気出して徹底マークすれば獲物を逃がすはずがないのだけれど、そこは魚類だから隙ができるので、人間があれこれ画策する暇もできる。ご都合主義だと言えばそれまでだが……。

chateaudif.hatenadiary.com

 小品だが、観ている間はなかなか面白く、オチもこれはこれで良し。