”お父様が見ています"『アメイジング・スパイダーマン2』(ネタバレ)


 シリーズ第二弾!


 高校卒業の日にまでスパイダーマンとしての活動に余念のないピーターだが、グウェンとの関係を続けながらも、彼女の父の亡霊に怯える日々を送っていた。一方、オズコープ社にも異変が起き、かつてピーターとも幼なじみだったハリー・オズボーンが代表の座につくことになる。しかし、父ノーマンからの遺伝で不治の病を患うハリーは、治癒の鍵を握る蜘蛛の毒を追い求め、スパイダーマンに接触しようとする……。


 鑑賞前に、先に観た妻が「アンドリュー・ガーフィールド関根勤に似ている!」と主張した為、時折どことなくそう見えてしまって往生した。冒頭、卒業式から始まり、前作(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120707/1341652906)の後で高校出たのね。もう三十路なんですけど、ガーフィールド。関根勤に見えるのはどことなく表情が固いせいだが、多分、あまり表情をくしゃっとすると皺が寄って年相応のおじさんに見えてしまうからだと思う。


 もういい加減長いこと付き合っているのに、今更「家族と食事はちょっと……」とか言い出しちゃうあたりは首をひねったが、前作で死んだグウェンのお父さんの幻影が、いまだにガーフィールドを苦しめているのであった。まあ原作を知っていればもちろんのことだが、とてつもない悲劇の予感がするのである。彼女の父親との今際の約束を反故にして付き合い続け、イチャコラの限りを尽くし……。常に罪の意識を感じながらも、その場の快楽から逃れられない、ごくありきたりな若者像……。グウェンもまた彼を愛しながら、人生の岐路に立とうとしている。迫る別れの時……。


 時を同じくして誕生する電人エレクトロ。そしてピーターの幼馴染であったハリー・オズボーンの帰還。長尺な割に、ここらへんの描写は非常にあっさりとしていて、ハリーとピーターの昔の関係などもほとんど口で説明してしまうので、あれっとなってしまったわ。このあたり、前作を丸ごと前振りにしたような構成の割には、なんでこの話に限っては振ってなかったのか謎だな……。
 マーク・ウェブってやっぱり陰湿さのないモテ男なのかな、と思うぐらいに恋愛話が延々と続き、悪役二人の内面は完全に演技任せで、ちっともネチネチしたところがないのだよね。そもそも、二人登場するものだから話も見せ場も分散して、グウェンに対しても「一応、面識はあります」ぐらいの関係に留まっちゃっているので、クライマックスの展開もヴィラン側から冷静に考えると、なんでこんな展開になってるの、となってしまう。もう少し掘り下げて、能動的に狙って殺しに行くような話にすればよかったのに。
 作り手はほんとにピーターとグウェンの関係を描くことにしか興味なくて、原作をなぞった悲劇も根本的な原因はパーカー親子であることになっている。まさに二人の世界、男女の関係、閉じた恋愛物語で、悪役もそこに発生している事象に過ぎなかった感じですね。全然悪意が足りない。


 物語上の必然として訪れるとてつもない悲劇……の割にあっさりしていて、マーク・ウェブの「ライトな文系」感が漂う……。前作でヒロインをクライマックスで吊るさずにお父さんを代わりに吊ってたのは、今作に温存するためだったのであろうが、エレクトロにとってもグリーン・ゴブリンにとっても大して眼中に無いグウェンが話の中央に来ちゃってるのは、いかにもここで死なせるためのように見える。で、完全に二人の話だから、単に「失恋」の濃い目の表現のようにも見えてしまったな。
 せっかくグリーンゴブリンを次作にまた引っ張ることにしたんだから、もうちょっと因縁が盛り上がるように、もっとデハーンが手ずから惨殺するようにした方が面白かったと思うのだが、半分事故みたいな展開になってるのもあれっ?と思ってしまったな。デハーンが頭ゴチンと打ってガクッとなって……えっ? これで終わり? アンドリュー・ガーフィールドと言えば『わたしを離さないで』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110329/1301394078)での「うがあああああああーっ! ああああああああーっ!」というやるせない叫びが印象的だったので、それがここで爆発するのを楽しみにしていたのであるが、割と大人しめであった。が、もっとビックリしたのはそのすぐ後にもう葬式のカットになってしまったこと……。えっ、デハーンは見下ろして高笑い(でも心は泣いている)をしないの? 二人は悲しき決戦をしないの? ピーターは仇を討たないの? と、かなり肩透かしを喰らった気分になりましたよ。デハーンは刑務所に入ってたが、わりと健康そうなのもまた三部作構成の都合だな……。
 結局、自ら手を下したわけでもなく復讐の対象でもなさげだし、次作では今度こそ決着をつけるのではなく、スパイダーマンと組んでヴェノムとサンドマンと戦うのであろうか。


 そんなこんなでどうも腹七分目感を抱いていたのだが、その後の真のラストは良かったですね。愛する者を失っても、人々の呼ぶ声がある限り、彼は立ち上がるのだ……というスパイダーマン・ライジングを5分でやってしまったところが素晴らしい。で、今までは何だか勘違いからくる余裕じみていた軽口も、心の痛みを感じながらも己を鼓舞するために言っているようでいいじゃないか! ライノはいつまで経っても出て来ないから、ひょっとして序盤のトラックが実はライノだったのかな……とちょっとドキドキしてしまいました。
 前作は嫌いだったけど、これで次はちょっと応援したいなあという気持ちになってきたね。『(500)日のサマー』的恋愛話もラスト3分でオータムが出てくるところ以外はもうやった感じだし、次作はもうヒロインなしの話にして、グウェン・ステイシーと心中するシリーズにするのも斬新でいいかと思います。今回の話でMJがちょろちょろしたら、なけなしの悲劇性がさらに薄まっていたろうし、カットは正解だろう。もう最終作のラスト3分にだけ登場させたらいいんじゃないかな。