“金の切れ目が”『川流の島』


OAFF2018『川流の島 / The Island that All Flow By / 川流之島』予告編 Trailer

 大阪アジアン映画祭2018にて。

 台湾国道の料金所で働く、一人息子を持つ母。だが、全面ETC化による失業を間近に控えたその頃、息子が同級生の少女をレイプしたと、少女の父親に告げられる。示談金を要求され、途方にくれた彼女は……。

 特に期待もしていなかった一本で、元は台湾のテレビ映画らしい。主人公は高速道路の料金所で働くシングルマザー。が、高校生の息子が、同級生の女子とセックスしたことで、女子の父親から慰謝料を要求される。弁護士曰く法外と言うほどの金額ではないが、何せ生活も苦しいので捻出の目処は立たず。さらに、職場の料金所も自動化に合わせて閉鎖が近づいていて、もはや絶体絶命である。
 息子は息子で「愛し合ってる!」とズレまくったことを言っていて、全然いうことを聞かない。万事休すの時に思い出したのが、ずっと口説いてきてる料金所の客。30前ぐらいの男で、トラックで配達の仕事をしており、通行証の裏に毎回口説き文句を書いてきて、冷たくしても全くへこたれる様子のない男。出てきた瞬間からウザさがすごくて、完全な人格破綻者にしか見えないのだが、「俺、結構、金持ってるよ」とほんとかどうかもわからぬ言葉に乗せられ、金のためにセックスすることに……。
 超イヤなんだけど、ふっかけた結果、この調子で続けてればわずかながら慰謝料払う目処が立ってきた……のに、学校に行かない息子! 料金所から抜けられないから、ウザ男にやむを得ず頼むのだが、子供に対してもウザさを全開にして逃げられそうになる。息子の名前は「傅彥超」なのだが、超の字に大喜びのウザ男。「スーパーマンか! じゃあ俺はバットマンだ!」と、もう勘弁してくれ、と言うウザさを発揮。結果まとめて補導されるのであった。いやはや、人生は辛い!

 息子は相変わらず同級生女子を追いかけてるのだが、相手は金持ちなので運転手のガードが固い。しかしここでウザ男が機転を効かし、運転手を世間話で懐柔。運転手曰く、

「あのガキがお嬢さんをレイプしたんだよ」
「マジで!?」
「……ということになってるけど、あの年頃の娘を持ってたら、父親はそう思いたいんだろうよ」

 まあそういうことなんだろうが、しかし追いすがる息子ちゃんを突き放す女子。

「おれを愛してるだろ!?」
「愛とかよくわからない。子供だもん」

 恋に破れすすり泣く息子ちゃんを抱き寄せるウザ男の頰にも涙が……。
 この主演の穀潰し男がウザすぎて最高。役者はチェン・レンシュオさんと言って、ダニエル・ウー明石家さんまを足して二で割ったような顔。まあまあいい年なのにいきったファッションといい、この超絶的なウザさの演技がすごすぎる。
 息子ちゃんには親身だったり恋愛の虚しさも知ってるようで、まあ根は悪い人間ではない。ただ金銭感覚や下半身がだらしないだけでだ……。
 仕事は兄の会社の配達なのだが、もらった給料は酒と女遊びに消えるだらしない生活をしながら同居してるので、兄嫁にはめっちゃ嫌われていて、甥っ子の教育にも良くないと思われている。おまけに食事中はクチャラーなのがとどめを刺す。

 そのウザ男を頼るしかないヒロインの悲しさ……なんだが、母親の恋人(!)ということで父親を知らない息子は金もらってるのを知らないから懐き始め、段々と疑似家族のように。職場の料金所で真っ先に解雇の示談に応じてしまったため、仲良かったはずの同僚にも嫌われてますます孤独になっていた彼女も、ついには心を許して行く……。

 束の間の平穏な日々が続き、このまま幸せが訪れるのでは……と言う希望が生まれるのだが、実はクチャラーは兄ちゃんの会社の金に手をつけていたのであった……。この後の息子ちゃんも交えた修羅場が最高of最高なんだが、主演女優イン・シンさんはまさに鬼気迫る熱演で演技賞も納得ですよ。

 テレビ映画ということで全然スペクタクルもないのだが、撮り方もうまいしなぜか超ダイナミックな印象だけがやたらと残る。クチャラーに泣かされるクライマックスにも参りましたね。救いとか光とか、まあ全然なくて「ふりだしにもどる」感が虚しいんだが、それでも人生は続くし、何とか渡って行くしかねえよな。今年のアジアン映画祭の思わぬ伏兵にして、裏ベスト映画でありました。

パナソニック(Panasonic) ETC車載器アンテナ一体型 CY-ET809D

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