“天皇制を撃て”『朴烈 植民地からのアナキスト』
OAFF2018『朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキスト』予告編 | Anarchist from The Colony - Trailer
大阪アジアン映画祭2018にて。
1923年東京、関東大震災が起こったその年。朝鮮人虐殺が隠蔽されようとする中、アナキストである朴烈とその妻である金子文子が皇太子暗殺を企てたとして投獄された。世にいう、「朴烈事件」の幕開けである……。
今回はこれがオープニング作品。舞台は関東大震災頃の東京。
植民地時代の移民や出稼ぎ労働者が大勢いた時代ということで、人力車引きである主人公への聞くに耐えないような罵倒から幕開け。朝鮮独立運動の活動家であった朴烈だが、関東大震災後、反乱の疑いありとの口実で、同棲中だった同じく活動家の金子文子と共に逮捕されることに。
特別、強烈なキャラクターとして描かれているわけではないはずだった二人だが、政治運動潰しのために無実の罪で捕まると、それを逆手に取って皇太子暗殺を計画していたと言い始め、遥かに大きな「大逆罪」で裁かれることによって運動を盛り上げようとする。
二人のキャラクターは、奇矯さもあるが素顔は平凡かつ温和な好人物として描かれているが、状況が激変し日本政府と対峙するにあたり、どんどんエキセントリックさを増して行く。これは本性がこうだ、というわけではなく、法廷を含む「劇場」を最大限に盛り上げようとするための行動なのだが、それを突き詰めて行くと恩赦も拒否し自ら死刑を望む、というところまで行き着く。
植民地支配と人種差別の構造がまずあり、その頂点に君臨する神国日本の天皇を撃つのだ!と言う者に対し、まさにその理屈を補強する「大逆罪」を適用してしまう、という無神経さがポイントなのだが、二人の行動によって注目が集まれば集まるほど、司法も政府も混乱し、全てが政争の道具となっていく。
裁判後の政局の複雑さもあって、なかなか背景全てを理解することは難しいが、綿密な取材が感じられるまさしく歴史の1ページですね。
文子役のチェ・ヒソが日本在住経験もあって、ほぼネイティブなレベルの日本語を披露。イ・ジェフン共々強烈な個性と普遍的な愛情関係を演じるあたり、政治劇とは言えこれもまた韓国映画らしい一本になっているな、と感じた次第。そしてまた、この日本公開なさげな一本をオープニングに放り込んでくるアジアン映画祭のチョイスが最高ですね。
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