”命を愛して”『ユダヤ人を救った動物園』


映画「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」予告編

 ジェシカ・チャスティン主演作!

 1939年、ポーランドワルシャワは、第二次大戦の皮切りとなるドイツの侵攻を受ける。ワルシャワ動物園を経営するヤンとアントニーナの夫妻も戦火に巻き込まれ、動物園もまたナチスの徴発を受けることに。占領下で動物園の存続を願う二人は、密かに友人のユダヤ人を匿うのだが……。

 さて『女神の見えざる手』も大好評だったジェシカ・チャスティン、今年2本目の主演作が来ましたよ。ナチスに隠れてユダヤ人を匿い国外へと逃し続けた、ワルシャワ動物園を経営する夫婦のお話。

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 バカ広くて、園内をフリーダムに動物が駆け回ってる、すごくいい雰囲気の動物園だったのだが、そこへナチスの爆撃がドカンドカンと降り注ぐ。生き残った動物たちも、占領下で次々と射殺され、ナチの科学者であるダニエル・ブリュールが希少種だけは保護してドイツへと運び去る……。宣伝で出てるホワイトライオンの赤ちゃんもここでお役御免ですからね!

 たまにドイツ語やポーランド語をしゃべってみつつ、肝心なところは英語で通すなんちゃってヨーロッパ映画ではあるが、ジェシカ・チャスティンは今回は大人しめのキャラをさすがの演技力で見せますね。ダニエル・ブリュールは夫役ではなくて、彼女に気があるナチの科学者兼将校役。そもそも爆撃した側のくせに、恩着せがましく動物を保護しているようなことを言って、自分は尊敬や感謝を受けるべきと思ってる勘違い野郎で、しかも段々とヒロインの好意をも求めるようになる……なんか既視感を覚える役だな、と思ったら、『イングロリアス・バスターズ』とまったく同じキャラやがな。
 ジェシカ・チャスティンの側は全然気がないんだけど、中盤以降、ユダヤ人を匿い出してからは、地下で物音を立てたのをごまかすために抱きついたりして、ますます勘違いされてしまう。調子に乗って手を握るブリュール! それを見てジェラシーを抱く夫! これはごまかすためのお芝居だからと主張するチャスティン!

 夫の方はもう動物がいなくなった動物園を存続させるために、豚を飼っていいか、とナチスにお願いする。厩舎は維持できるし、ドイツ軍に肉を提供できて経営も回るし……何これ、天才的なアイディアだな。そして豚の餌のためにゲットーに生ごみを取りに行き、ごみの中にユダヤ人を隠して運び出す……さらっと描かれているが、もうここまできたら悪魔的な知恵としか言いようがないぞ。
 動物運び込み用の地下通路を通ってこっそり隠れるあたり、まあ重たく悲しい話なんだがちょっぴりわくわくするし、ここに『ライフ・イズ・ビューティフル』の父子がいたらどれだけ大盛り上がりしただろうね。

 クライマックスは、地下に踏み込んで来たブリュール以下のナチ野郎どもが、もぬけのからなのに気づいたところで、ジェシカ・チャスティンが爆弾のスイッチを非情にカチッ! 全員生き埋め!だろうと想像していたが、まあ今回はそういうキャラではありませんでした。
 地味で盛り上がりには欠けるんだが、実は相当すごいことをやってますね、この人たち……という実話力を感じさせる一本。ワルシャワ動物園には、一回行って見たいな!