”ドッグスターとして”『ジョン・ウィック』


 キアヌさん主演作!


 最愛の妻を亡くし、彼女が死の間際に送ってくれた子犬と暮らし始めたジョン・ウィック。だが、彼の愛車に目をつけたロシアン・マフィアの御曹司が深夜に彼の家を襲う。車は奪われ、子犬も殺されてしまったジョン・ウィックは、復讐のために動き出す。かつて捨てた過去、伝説の殺し屋としての姿で……!


 「すごいアクション映画!」「ガン・フー!」と、さもアクションがすごいような宣伝をしていたが、実際はそうでもない。主人公のジョン・ウィック自身、ブランク明けという設定だし、主演のキアヌ・リーブスもすでに53歳、正直『マトリックス』の時ほどの切れさえない。
 必ず連射で仕留めるガンアクションは面白いし、反応速度の遅さはカット割りでごまかせる……んだけど、そうはしたくないのか、カメラ遠目、まあまあ長く回すせいで、どうしてもたどたどしくもたついた感が目につく。MMAっぽいムーブを入れるとなおさら下手に見えるし……。


 序盤から「えっ!? あのジョン・ウィック!?」「おまえは奴を怒らせてしまった……!」と悪者がびびりまくり、ガンガンハードルを上げまくるせいで、いざアクションとなるとどうしても「そこまでびびるほどのものじゃないだろう」という風に見えてしまうのだな。実際、最初に死にかけてるし、その後も負傷したり何回も捕まるし……。


 しかし割とよれよれと捕まってしまうジョン・ウィックに対し、悪役のギャングのボス、ミカエル・ニクヴィストさんは終始警戒しっぱなしのびびりっぱなし。油断したり逆にとどめを急いだりということもなく、またうっかり逃げられてしまう。どうも悠長なんだよな。本気で殺しに行ってないように見える。


 左様に登場人物のテンションと、観ているこちらの認識にギャップが生まれてしまうのは、作り手のこのキャラクターとキアヌさん自身への思い入れが強すぎるのかな。ハードボイルドを気取って「どう? かっこいいでしょ?」と差し出しても、実際にそう受け取ってもらえるとは限らないということで……。


 ただまあ、作品全体のリアリティラインはそもそも緩め。全然ハイテクは駆使されず、車も銃も古めかしい雰囲気が漂う。殺し屋組織の息のかかった高級ホテルで、専用コインのみでやり取りするあたりが今作の世界観の象徴という感じで、主人公も含めて出来上がっている。この散々人が死ぬ割に非常に「牧歌的」な世界にはまると、まあまあ味わいが出てくるのではないかな。


 キアヌさんという人は、ハリウッドスター的な気取りのない人で、俺が俺が的な自意識にも乏しく、「執念の殺し屋」というキャラクターにはいまいちハマらないと思っていたのだが、今作は「犬」というガジェットを置いたのが効果的で、ギャングなどの悪党にはなかなか共感しえないけど、わかる人には強烈にわかる感覚に突き動かされているところは結構それっぽい。常に周囲と違う概念で動き、周りに流されないキアヌ・リーヴスのパーソナリティが出ている。


 しかし続編も作るらしいが、いちいち犬が殺されていてはちょっと続かんわな。次作ではどんな動機付けを用意するのかにも注目だ。

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