"今を生きる"『サイド・バイ・サイド』


 デジタル映画に関するドキュメンタリー。


 ほぼクリエーター視点のみで構成されたインタビュー集。インタビュアーのキアヌもそうだしな。キャメロン、フィンチャー、スコセッシ、ノーランなどの有名監督と、その下で働く撮影監督たち、自主映画や卒業制作を作っている人たちなど、主にカメラを回す作り手側の視点から作られている。もの作りの現場での35ミリカメラの使い勝手から、それに対する数々のデジタルカメラが登場。過渡期である今を描き出す。


 テンポはいいし、お勉強にはまあなるんだけど、メリハリがいまいちだし、内容に刺激的なものがない。ビジネスや観客の観点はわざと省いているかのようで、対立する構造は提示されない。プロジェクションのことなんて、ほぼ移行が終わったようなことになってるしな。無論クリエーターごとに意見は違うんだけど、バラバラにそれぞれの話をただ流しているだけで、意見がぶつかることはない。ノーランとキャメロンがdisりあったら面白いのに。まあ巨大なビジネスの世界でつかみ合いすることなんてありえない……と思いながらも、名だたるあくの強い巨匠、才人達にはそれぞれ内心思うところがあるだろうし、その秘めたものがじわりとにじみ出るようなものが観たかったなあ。中盤はかなり退屈してしまった。


 そうしてクリエーター同士で意見をぶつけ合うことがないのは、まだフィルムにせよデジタルにせよメジャーな作り手には「俺は俺のやり方でやるよ」という選択の余地があるからで、もう少し流れが変わればまた話は違ってくるのだろう。


 しかし、こいつらやっぱり「今」を生きてるな〜。話が映画の保存の問題に行っても、「うーん、まあそのうちなんとかなるんじゃない?」と気のない様子。オレの映画は大丈夫、と思ってるというよりは、過去作よりもこれから作る新しい映画のことの方が重要なんであろう。ラナ・ウォシャウスキー監督も出て来て「失うこともまた人生よね」とどこか寂しげに語ってましたが、この人が言うと説得力あり過ぎだね!


 一向に公開のめどが立ってない『47RONIN』の撮影現場も映ってましたな〜。キアヌさんも話題をつなごうと必死なのか……。