"ワイ泣きしませんか?"『ワイルド・スピード SKY MISSION』


 シリーズ、ついに7作目!


 ロンドンで倒したショウの兄、イアン・ショウによって、東京にいたハンが殺された……。ドミニクとブライアンの住む家に爆弾と共に挑戦状を送りつけるショウ。ホブスも重傷を負わされ、レティも行方をくらます中、ドミニクらはかつてないこの強敵に立ち向かうことを決意する……。


 ヴィン・ディーゼルが毎回毎回「これがオレたちのラストミッションだ……!」と言ってるのに、その度に大ヒットしてしまって続きが作られ続けているシリーズ。とうとうここまで来たか……。とは言え、『MAX』以降はラストで「これは次作に続くネタですからね!」というのを必ず振っているし、特に前作(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130715/1373875044)のジェイソン・ステイサムが出てきたラストには度肝を抜かれましたね。


 そのステイサムが登場する今作のオープニング、かの『イコライザー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20141112/1415798570)のラストを出だしに持ってくるような超必殺技。弟のいる病室を出たステイサムの前に横たわる死屍累々……。この映画はこれからこういう馬鹿げたことが次々と起きますよ、ということを見事に説明しきっている。あらゆるステイサム映画の最大公約数的な趣さえある見事なオープニングだ!
 まあそうして腹がよじれるほど笑ったオープニングでしたが、ちょっとここが勢い良すぎてむしろピークに感じてしまったな……。


 その後、ステイサムとロック様の最強ハゲ決定戦第一ラウンド、ヴィン・ディーゼルとステイサムのハゲ第二ラウンド(略しすぎ)、日本版サブタイトルのスカイ・ミッション、ポール・ウォーカートニー・ジャーが対決、アブダビミシェル・ロドリゲスとロンダ・ラウジーの前作のジーナ・カラーノ戦に続く女子対決第2ラウンド、さらにビル飛び越えシーンと迫力充分の見せ場が続く。さらに全シーンでこれでもかこれでもか、と追いかけてくるステイサム。
 まあ面白いんだが、さすがにコース料理の全過程で肉と魚と麺が出続けるような詰め込みっぷりで、若干メリハリに欠けてだれたな……。途中、さらにカート・ラッセル様に決め決めの見せ場まで用意して、その後でやっとこさハゲ決勝のクライマックス。このクライマックスはすでにネタが尽き気味で、ドローンまで持ち出したもののなぜか地元に帰ってきているという……。


 ストーリーの流れも、追うステイサムを追われる側に追い詰め返す!……はずが失敗してまた追われることに……そこから大逆転! という筋なのだが、追われているはずの展開でもステイサムが妙に軽くどこからともなく現れるし、ヴィン・ディーゼルたちも権力者に雇われてほいほい移動しすぎるので、全然追い詰められている感がないのよね。ジョーダナさんとか子供とかも「避難しました! はい安全!」で片付いてしまうし。
 チームものとしても、何せサン・カンもガル・ガドットもいなくなって段々人数が減り華もバラエティもなくなってきてるので、ちょっとパワーダウンしているね。映画としてはやはり『MEGA MAX』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110707/1309931365)、『EURO MISSION』の方がボリュームは同量以上で切れもあった感あり。もう七作目だから、ここまでのテンションを保ってる方が珍しいわけであるが。


 ……しかしね……今回はポール・ウォーカーのことがあったわけじゃないですか。しかも撮影途中の話ですよ。事前にポールは今回でラストということが決まっていれば、最初から原点回帰で彼とのバディ感を強調したりもできたと思うけれど、ほんとに突然のことだったからな……。後から編集も加え、代役やCGも駆使して追加撮影を行って完成したラスト……泣いただろ! ここのヴィン・ディーゼルの表情も演技を超越していて、単にお話上のことならチーム解散というだけのことなんだけど、そうじゃないんだよ……! 話の上ではどこにも行ってないのに「またいつかおまえと会いたい」みたいな歌詞が流れて、一作目の出会いからこっちがオーバーラップして……この演出はずるーい!


 ロック様が不死身なのはまあ当然として、ロンダも引き分けだし、トニー・ジャーも落下した先はよく見えないし、カート・ラッセルも怪我しただけだし、ステイサムも最後は捕まるしで、「死」の気配はずいぶん薄められているように見えたのも、何か配慮の一環なのであろうか。
 本来ならポールは「今回ますます影薄くなったなあ」と笑われて終わりで、泣かせの話はミシェル・ロドリゲスとの結婚云々という少女漫画みたいな展開が主軸になっていたのだろうな。
 急遽展開をいじったせいか、今回だけの監督になったジェームズ・ワンではまだちょっとこなれ切ってなかったか、雑に感じてしまった部分も結構多い。まあまあワイスピだから別にそれでもまったく構わないわけだけど……。


 次回作もまた決定したみたいだが、今回『3』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120830/1346299758)からの流れでちらっと登場したルーカス・ブラックはまた出てくるかな? 段々メンバーも減ってるし、そろそろ加入があるかも。まあ次作はジェイソン・ステイサムとまさかの共闘があっても、何ら驚きはしませんけど。

ワイルド・スピード スカイミッション

ワイルド・スピード スカイミッション