”電話帳はこう使え!”『オオカミは嘘をつく』


 イスラエル映画!


 少女の行方不明事件が起き、警察は目撃証言から一人の教師に目をつける。しかし、他の証拠もないままに捕らえ拷問を加えたことがばれ、担当刑事は交通課へと左遷されてしまう。一方、少女は無残な死体で発見され、復讐に取り憑かれた少女の父親は、容疑者に自ら拷問をかけることを企てるのだが……。


 タランティーノが絶賛、という惹句で売られていた映画。


 冒頭、ごっつい大げさな演出で少女誘拐のシーンを披露。音楽も大げさで超スロー。おかげさまでインパクトのあるシーンになってるね。
 即座に容疑者がとっ捕まり、しかしまったく証拠がないので、いきなり拷問しまくるイスラエル警察であった。しかし結局証言は得られず、通りすがりの学生に動画を撮られてアップされ、暴力刑事は左遷に……。


 さらに、捜査も虚しく直後に誘拐された少女の首なし死体が発見されるのであった。いやはや、パンツを下げられて腐乱した死体のビジュアルは、そのずばり映さないセンスも含めて、今年のベスト切株になりましたね。


 大筋に絡むのは、容疑者、刑事、被害者の父親の三人。登場人物が少ないので、ミステリとしての着地としても皮肉としても、ツイストの効き方が少々物足りない。あのケーキも、ちょっと途中の展開のためだけ、という感じで物足りなかったところ。連続殺人らしいのに、他の犠牲者に触れていないところも「?」である。
 筋だけ追えば、どうということのない話……なのだが、ちょいちょいと交えてくるコメディのセンスが、緩いなりにアクセントになっていて、中盤の一部を除けば退屈はしなかった。


 被害者の少女のお父さんが、山奥に買った民家に容疑者を監禁して拷問するのだが、そこへさらにその父親が訪ねてくる……。うーむ、多少は年配に見えたが、このおじいちゃんが割合元気そうなのに対し、お父さんが老けてるので、あまり年の差があるように見えない! 最初は拷問に対してドン引きなのだが、元軍人ということで無駄なテクニックを発揮し、次第にやる気を出していくあたりが笑える。
 拷問シーンも肝心なものは一瞬ちらっと見せるか見せないか、のレベルで、R-18は厳しすぎだろう、という感じであったが、密室劇プラス会話劇で臨場感の出し方が上手いので、なんとも「痛そう」であるところが良い。


 オチよりも途中の描写を味わう(痛そうだけど!)映画ということで、なかなか楽しめました。

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