”この愛のために突っ込め”『ポイント・ブランク 標的にされた男』


 フランス映画のリメイク。


 交通事故で運び込まれてきたはずなのに、銃創を負っていた患者。担当医のテジュンはその男の治療に当たるが、直後、彼の妻が何者かに誘拐される。返して欲しくば、入院した男を連れ出すように要求されたテジュンは、警察の目をかわそうとするのだが……。


 『この愛のために撃て』のリメイクですよ、観てませんが……。英題が『point blank』だったので、この韓国リメイクの邦題もそれに合わせたものに。
 今年はコン・ユさんのイケメンアクション『サスペクト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20141015/1413375339)と、チャン・ドンゴン『泣く男』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20141031/1414760502)がいささか期待外れな内容で、まあなかなかズバリ決まるアクションものはないのだよなあ、と思っていたところ。今作もリメイクということで、大きく期待していた映画ではないが、結果として手堅くまとまって面白くなっていたな。


 冒頭、謎の銃撃戦を逃れた男が、車に跳ねられ病院に運び込まれてくる。治療に当たった担当医は身重の妻を抱えていたが、翌日、彼女が何者かにさらわれ人質に……。助けたければ、入院した男を連れてこい、というのが要求。殺人事件の容疑者として男をマークしている警察の目をかい潜って、医師は男を連れ出せるのか……というのがまずは最初のサスペンス。男の正体とは?というのがまず気になるところなのだが、実はこれがあまり話の真相と関係ないのが面白い。お約束通り「元傭兵」なんだけど、そのバックボーンゆえに話に絡んだわけではなくて、利用された男がたまたま「元傭兵」だったので、利用した側が大変な目に合うことになる、というお話の典型。


 とはいえ、元傭兵も冒頭からいきなり負傷して、しかも情報が何もない状況なので、反撃に出るまではかなりの苦労を強いられることになる。そこに絡んでくるのが一般人の医者夫婦ということで、この二人も状況は同じな上に戦闘力が皆無なので、余計に大変な目に……。
 事態はその後もどんどんややこしくなっていき、巨悪の前に善人側は大苦戦を強いられ、しなくてもいいはずの対立をしてしまう。非常に歯がゆいのだけれど、でも一つのきっかけさえあればそれが好転しそうなことも示され、はらはらしつつそれを待つことになる。


 『殺人の告白』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130709/1373370569)でボウガンを撃ちまくり、『サンシャイン・ラブ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140408/1396945605)ではメガネっ子だったチョ・ウンジが、今回は刑事役。しかし、女刑事の部下役ということで、何かキャラもかぶっていてポジション良くねえなあ、と思ってたら、後半急に脚光を浴びたから驚いた。ファイティングポーズが良かったですよ。
 主演の元傭兵役リュ・スンリョンさん、絶妙に強そうじゃない感じが良くて、スキルこそ高いが怪物的なほどには強くない。背後で車を爆破させたのに振り返っちゃうしな。キメキメにスタイリッシュにもなり切らず、人が死んで血も出まくるのにあまり強烈な情念がこもった話でもないところが、オリジナルがフランス映画であるがゆえか。


 クライマックスの警察署殴り込みもスカッとするし、音響の使い方が丁寧だったのも良かった。一番好きなのは、チョ・ウンジ刑事に助けてもらった医者が奥さんを抱きしめて再会の喜びに浸っているシーンの向こうで、見えないけどまだチョ・ウンジが悪党を殴ってる音が聞こえてるところだな。


 大傑作じゃないが、手堅く楽しめるアクション映画でした。