"車好きはお人好し"『ニード・フォー・スピード』


 カーレース映画!


 仲間と共に自動車工場を営むトビーは凄腕のレーサーとしてストリートで知られた存在。だが、かつての仲間で離別したドミニクからの仕事を受けたことで彼と賭けレースをすることになり、弟分を殺されることとなる。無実の罪で刑務所に入ることとなったトビーは、復讐のために最も危険なストリートレースに挑む……


 『ワイルドスピード』シリーズが、もはや殴り合いの一環としてしか車を捉えていなくなりつつある昨今、もう少しこだわってみましたよ……という映画が登場!


 主人公はアーロン・ポールという俳優、ドラマ『ブレイキング・バッド』で主役級だったのね。レーサー兼車の整備工というキャラクターだが、見た目まさにエンジニアというか職人というか、地味な固太りした男。全然イケメンじゃないよ! さらにその修理工場で働くチームも全員非モテ感満載で、せっかくパーティに行ってもモデルみたいな美女たちには全然相手にされない。車の話しかしないしな!


 そんな車バカの主人公だが、レースで嫌味なライバルキャラに弟分を殺され、無実の罪で刑務所行きに! 二年で仮出所してすぐ、マイケル・キートン主催の伝説のレースに出て仇を取ろうとするのだが、そのためにレースの開催地まで45時間以内にアメリカ大陸を横断して行かねばならない……。そんなこんなで冒頭のレースに新車の試し乗り、さらにこの大陸横断と、ずーっと車に乗りっぱなしの展開が続く。
 主人公は車オタクという設定だが、意外と改造の薀蓄などは垂れず、また登場する車もギミック的な部分はあまり描かれないのだな。見た目かっこいい! 速い! 頑丈! ぐらいの非常にアバウトな説明ばかりで、そんなことを語ってるひまがあるなら、走ってるところや車体の美しさ、豪快なカースタントを見せようという気合が充分。逆に運転技術も何がすごいのかよくわからんかったところはマイナスかな。


 成り行きで同乗したイギリス訛りの女ことイモージェン・プーツさんが、お高くてはっきり物を言い過ぎる嫌な女役で、訛りがきつすぎて片言に聞こえるぐらいの戯画化されたキャラ。……なんだが、だんだんブサメンの主人公と仲良くなってくると、意外といいやつじゃないかこの女……となってくるのだよね。主人公が逆に車のことしか知らん素朴な人で、「えっ、こんなことも知らないの?」と言われても「うん、知らない(笑)」と気にも留めないあたり、実は相性がいいのねとわかるのであった。天然とツンデレですよ。


 悪役が欲しいものは金、名声、勝利、女、という徹底的につまらない底の浅い役で、主人公は復讐と自身の無実の証明のために戦うということで、びっくりするぐらい単純でわかりやすい話。なんだけど、その中でわりと細かくキャラ描写が効いてるし、映像も迫力があるので楽しい。全然期待せずに行ったらばまずまず面白かったのであった。