"青春の寄宿舎"『モスダイアリー』


モスダイアリー [DVD]

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 ヴァンパイア映画!


 かつて、詩人であった父の自殺を目撃したレベッカ。心に傷を追いながら親友のルーシーらと共に寄宿学校での生活を送っていた。だが、ある日エネッサという転校生がやってきたことで、レベッカルーシーの関係は徐々に変わっていく。エネッサと親しくなり、レベッカと距離を置くようになったルーシー。嫉妬心を抱くレベッカだが、ルーシーがなぜか衰弱していくことから、ある疑念を抱く……。


 エネッサ役リリー・コール、とにかく初見の印象が「変な顔!」で、何とも個性的。ポスタービジュアルでも異彩を放っているが、実際に画面内で動いていても浮きまくり。さらに、他のキャストに比べて異様に身長がある(公称179センチ)。もともとモデルということで、スタイルもいいんだが、ちんちくりんの女学生に混じると目立ちますよ。回想シーンで古風な格好をしているところは、むしろ似合っていた。


 そんなリリー・コールが「異物」として寄宿学校に転校してくることによって、主人公レベッカたちの属する小さなコミュニティが崩壊していく。ただ、転校生である彼女は、むしろその寄宿学校そのものに取り憑いた存在であり、永遠に変わらない時に囚われた者として、主人公を同じような存在にしたいと願っているのだね。ヴァンパイアという体裁を取っているが、それは変わることを拒む青春時代のメタファーに、もろになっている。
 寄宿学校という閉鎖された空間で、永遠に仲間に囲まれて過ごしたいという漠然とした主人公の願望。それに対して、そうして永遠に生きるということはこういうことなのだ、と突きつけるヴァンパイア。同級生たちは、ある者は薬に手を出し、あるものは処女を喪失したことで不意に学園を去る。それは、退学や転校という体裁を取りつつも、そうした美しき青春時代からの卒業でもある。


 血のイメージなどもありヴァンパイア映画になっているけど、凶悪さや暴力的な側面は薄く、むしろ地縛霊的なゴースト・ストーリーとして受け取れたところ。寄宿舎に憑いた幽霊は自分に近い魂を求め、近しいものを取り殺すことによって孤独へと追い込んで行く。それは親友との、いつかくるかもしれない決して良いものとは言えない離別をも隠喩しているのだ。
 主人公が最後に選択する「卒業」の果てに、寄宿舎を出た街並みが映るシーンは、『汚れなき祈り』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130407/1365329617)のラストを彷彿とさせたところ。


 主人公が処女であることも序盤に匂わされるし、色々と「大人になる」ことを示唆するガジェットも出てくるのだが、スコット・スピードマン演ずる文学教師がその極め付け。吸血鬼の基礎知識を説明してくれるのも彼だし、『アンダーワールド』のハイブリッドとして、「犬神先生」的な役回りかと思っていたら、「君には支えが必要だ」とか何とか言って手を握り……うわあ、エロ教師だよ! このやり口で何人女学生食ってるんだよ! まあまあ大人の階段を登るのは大事ですけど、こんなやつに騙されたらいけませんよ!


 大人になるか否かで悶々とする主人公に対し、永遠の女子学生たるヴァンパイアはもうそんなことは超越している……はずなんだが、一応学生を装ってるので、学校のルールには従わなければならない。体育の授業をさぼった補習として、スクール水着でプールに放り込まれるヴァンパイア! うわあ、なんかナイスバディ過ぎて無駄にエロい! スク水姿で折檻される吸血鬼というのも、なかなか変態的でよろしかったのでありました。