"彼もまた少年だった"『李小龍 マイ・ブラザー』


 ブルース・リーの知られざる時代を映画化!


 京劇の名優を父に持つ少年ブルースはアメリカ生まれ。香港に帰国した後、父のつてで子役になり、撮影所に通う毎日。激動の時代が続く香港で、ブルース少年は兄弟姉妹や友人たちと共に、たくましく成長していく。学生になった彼はストリートファイトに明け暮れ、詠春拳の伝承者イップ・マンにも弟子入り。そんな彼に新たな人生の転機が……。


 ドキュメンタリー映画『アイ・アム・ブルース・リー』をWOWOWで観たのだが、そちらは俳優や格闘家、ダンサーなど、必ずしも近しいとは言えない人たちが多数出演してブルース・リーの事を語る、というなかなか奇妙な映画であった。もはや情報が出尽くし、大きな影響を後世に与えて多数のマニアが生まれた後である今だからこそ、の内容。
 正直、あまり序盤は面白くなかったのだが、やはり見知った映画のシーンが繰り返し登場してから、後年の彼の人生と映画の中の台詞が重なる後半は見入ってしまったよ。


 さて、それらブルース・リーを崇め自分と同一視したファンの目線から作った映画と対照的に、実の姉と弟から見た家族の一員としてのブルース・リー像に迫った映画が、この『李小龍 マイ・ブラザー』である。
 アメリカで誕生した赤子が、役者である父と共に香港へ舞い戻り、そこで家族と共に幼年時代、少年時代、青年時代を過ごす。日本軍の侵攻やイギリスによる統治の中、彼はたくましく育っていく……んですが……。うん、何と言うか、実に平凡なんですよね。悪戯好きの悪ガキだったり、でも友達想いだったり、強くなるために武術を習ったり……いや、みんないい話なんだけど、ブルース・リーならではのエピソードは、もっと色々とあるじゃあないですか。早くその辺りを観たいな……。
 しかし無情にも時は流れず、子役時代を経て成長したブルースが近所のガキと友情を育んだり、チャチャを踊りつつ恋に落ちたりする展開が延々と続くのである。へー、こんな話があったんですね。いいお話だなあ。ところでグリーン・ホーネットのことは……。


 三角関係の果てに友達がアヘン漬けになったり、イギリス人の学生ボクシングチャンプと二度に渡って戦ったり、まだ人生は半分なのに、映画はクライマックスのような勢いに……いや、実際にクライマックスだったんだけどね!
 色々あって、香港にいづらくなったブルース・リーは、成功を目指してアメリカへと渡る。姉や弟たち、家族とも別れ……完! あ、終わった。ええーっ、これからドラマに出て、その後で伝説の映画群を撮る話にまったく触れないの? いやいや、これは姉と弟から見たブルース・リーの話なんで、一緒に住まなくなった時代の事は描かないし描けないんですよ。そりゃそうだ……。


 んん……しかし……波瀾万丈の人生を送り、数々の業績を残した人の、最も波風立たなかった時代を描く……って、どういうことだそりゃ! 伝記のさわりの部分、第1章だけを映画化したような内容。これで商売になるんだから、やっぱりブルース・リーは偉大ですよ! 実際の当時の写真を再現ドラマで見られて、なかなか勉強にはなりましたが、さすがにこの部分だけで映画にしちゃうのはどうかと思った。よほどのファンなら楽しめるのか、とも思ったが、そういうファンはやっぱり細部にダメ出ししまくりそうだけどな!

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