”香港でプレートランチを食べよう”『イップ・マン 最終章』


イップ・マン 最終章 [Blu-ray]

イップ・マン 最終章 [Blu-ray]

 アンソニー・ウォン主演!


 香港へ渡り、詠春拳を弟子たちに教えていたイップ・マン。だが、香港と中国の境界線が閉ざされたことで妻子と離ればなれになり、失意の日々に。弟子たちもそれぞれの生活を抱えながらも気を揉むのだが……。


 ドニー・イェンの二部作(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110424/1303616111)(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110206/1296983880)、『誕生』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120423/1335162864)、『グランド・マスター』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130609/1370788635)と、一時のイップ・マンブームも、ここで一段落の感あり。香港へやって来た後、ボクサーとは戦わなかった(笑)、イップ・マンはその後、何をやっていたか……というお話。


 ドニー版は完全なるフィクションとして理想化された人物像になっていた感があったが、こちらは良くも悪くもリアルと言うか、妻子との離別や、その後の愛人との関係、さらには人間関係の選り好みっぷりなど、いかにもアンソニー・ウォン的な人間臭さや投げやりさがよく出ている。反面、晩年の老いを表現するには少々、脂が乗りすぎている感もありだな。


 ストーリーが『グランド・マスター』ほどではないが長期に渡ってるせいで、いささかダイジェスト然としていることが、まさに晩年へと向かうおじいちゃんの物語であることに拍車をかける。流れる年月、病に蝕まれる肉体、述懐する息子……。
 そうして、あまりかちっとした物語になっていないせいで、少々漫然と弟子との人間関係の描写が続いていく。
 弟子は当然、全員詠春拳の教えも受けているのだが、いやー、ドニー版はドニー映画にしては超人性を全面に押し出してない、と思ってたんだけど、今作では弟子がみんなやたらと強く描かれている。詠春拳を覚えたらみんな強い! 警官役の弟子の人も、半ばダークサイドに足を突っ込んでいるにも関わらず、やっぱり強かった……。他の弟子も、愛人の存在を認めなかったりして物凄く心の狭い人たちに描かれているのだが、それでも腕は立つ、という設定。妊婦役のジリアン・チョンも戦おうとするんだもんなあ。
 微妙に登場人物が多いせいで、イップ・マン自身へのピントがぼけ、尺のためか群像劇みたいになっているのだが、刑事役の人は良かったね。わいろを結局もらっちゃったりして、師匠の教えには背いていて、そのせいでイップ師父のことがちょっと煙たいんだが、内心はまだ尊敬してて頼りにしている。日頃、銃を振り回しているんだけど、やっぱり詠春拳には誇りを持ってて、仲間を武術大会に斡旋したりして危機にさらしつつも、負けそうになると穏やかではいられない……という、実に振れ幅の大きいファジーなキャラクター。ややリアルな物語の一翼を担っておる。


 そんなこんなで、伝説の男だけど、写真も動画も残ってる人物に対して、ドニー版とは違うリアル寄りのアプローチをした映画……なんだが、まあクライマックスは九龍へかちこみしたりして、やっぱり神話的側面も捨てられないのだな。敵役は我等がホン・ヤンヤンで、まあアンソニーが立ち姿は決まってるけど動きは年相応かな……というのに対し、クマキンはやっぱり切れ切れであった……どういう身体の構造をしているんだ……。対して、ロー・ワイコンはいささか精彩を欠いたなあ。役もしょぼかったし。アニタ・ユンは久々に観たね。


 話が長期に渡ってるせいで、エピソードが多く、これでも愛人の病気やら、触れてないエピソードがいっぱいありますよ。終盤ではお楽しみのブルース・リーも出て来るんだが、いや〜、あんな貫禄ないしけたブルースは初めて見たわ……。末期はちょっと不仲だったのかな、やっぱり……。
 もっと人性の晩年の、戦い終わった瞬間に血反吐を吐いて最期を遂げるような壮絶な内容を想像していて、そういうのを観たいような観たくないようなで心配してたのだが、実際は良くも悪くも晩年的なおじいちゃん映画でありました。まあ面白くはないが、悪くもないというところ。

イップ・マン 序章&葉問 Blu-rayツインパック

イップ・マン 序章&葉問 Blu-rayツインパック

イップ・マン 誕生 [Blu-ray]

イップ・マン 誕生 [Blu-ray]