"囁いてくれよ側にいるよって"『サイレント・ハウス』(ネタバレあり)


 ホラー映画!


 幼い頃の一時期を過ごした別荘を売り払う事になり、サラと父親のジョン、叔父のピーターは、痛んだ建物の手直しをするためにそこに訪れていた。一時期、不法侵入者が住み着いたとも言われている別荘の中で、不気味な物音が響く。不意に何者かに襲われる父。サラは逃げ惑いながら、助けを求めようとするのだが……。


 大阪ではレイトショーで三日に一回という変則ペースで公開していた映画。今年になって『レッド・ライト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130225/1361771490)で文字通り赤丸急上昇中、『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130313/1363170404)でも景気いい脱ぎっぷりを披露したムチムチの新星エリザベス・オルセンが主演だ!


 郊外の一軒家が舞台で、登場人物はわずか4人プラスαという低予算ホラー。メインはヒロイン、父親、叔父の三人で、さして広くもない家から出られないまま、謎の人影に襲われることに。カメラがずーっとエリザベス・オルセンを追いっぱなしで、観客の視界も彼女の周囲に限定される。撮影者のいないPOVのよう。電気の止まった工事中の家の中だから視界も悪く、少し先はもう見通せない、というヒロインの視点を共有できる。「主観視点」ならぬ「主人公視点」ということで、背面から自キャラを捉えたFPSゲームなどに近いカメラワークですね。
 たぶん、間取りを図にしたら拍子抜けするぐらい狭い家だと思うが、90分弱を緩急つけて縦横に駆け巡って飽きさせない。地下室や屋根裏など、おなじみのロケーションもあり。


 登場人物も少なく、まあオチはこれぐらいだろう、という陳腐なもので、わざと曖昧にすることでツッコミを避けるような部分も多い。ただまあ、「主人公視点」を捉えたカメラによるトリックは、一人称の小説のようなもので、ぎりぎりアンフェアではないと言えるだろう。


 何もないっちゃあ何もないが、谷間見せつつ悲鳴をあげるエリザベス・オルセンを堪能しつつ、お化け屋敷のようなドッキリを楽しむ映画で、時間も短いし気楽に見られる佳作。



<ここからネタバレ>
 父親、叔父以外の登場人物は、主人公の別人格という解釈でいいのかな。幼女が本体で、グレーの怪人はいつか復讐する夢を叶えてくれる理想のお父さん、幼馴染は実際に相手をさせられていた「娼婦」役。表に出てる人格はすべてをアウトソーシングして何も知らない風を装う看板のような存在なわけだ。
 この辺りを掘り下げすぎないあたりも、物足りなくはあるけれど映画のバランスを崩さない感じでありました。
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