”その証文は俺がもらう"『傷だらけのふたり』


 ファン・ジョンミン主演作!


 高利貸しの会社で働くテイルは40歳。ある日、昏睡状態に陥った老人の借金を取りに行った先で、その娘ホジョンに惚れてしまう。借金を肩代わりすることになったホジョンを助けるために、社長から覚書を譲り受けようとするテイル。最初は彼を嫌っていたホジョンだが……。


 さて、アジアン映画祭でやった『国際市場で逢いましょう』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150428/1430215093)の公開も近いですが、とりあえずはこちらから。40歳の借金取りの男が、父親の借金を肩代わりしている女に惚れてしまい、彼女の借金を社長から買い取って迫る……。うーん、こうやって粗筋だけ抜き出してみると、ただのアウトな恐喝男で、いくらでもゲスい話に解釈できそうなのだが、そこはファン・ジョンミンありきの企画。いい歳こいてヤクザな仕事にやってる男なのに、どことなく可愛げがあって憎めないし、自堕落ではあるが人情味もある人物として描かれる。
 ある意味ベッタベタで、これをもっともっとソリッドに危険なキャラにすれば傑作『息もできない』になるのだろうが、そこはもう定番の人情劇なので……。ファン・ジョンミンがそのキャラの力を爆発させ、このダメな男を家族も女も放っておけないんだ、という気にさせてしまう前半は結構気持ちよく見られるあたり。
 地味な理容室を経営する兄夫婦や、銀行で働くヒロイン、借金を抱えてる商店街の人々など、韓国の下町の雰囲気もよく伝わってきて、ファンタジーなお話の裏で物語を支える。出てくる飯がいちいち美味そうなところもいいですね。


 後半、一気に時間軸が飛んで、いい雰囲気だったはずの二人がなぜか破局し、主人公がムショ入りしているので驚き。そこから、徐々に何があったかを明らかにしていく。時系列の入れ替えというトリッキーな仕掛けを交え、観客の興味を引っ張って一気に泣かせのドライブを駆けるための切り札、それは……難病だ! 「えーっ!」「またかよ!」と『サニー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120531/1338461888)ばりに突っ込むところまでが韓国映画のお約束で、あまりのベタさに仰け反ってしまったよ。
 かくしてオチがあまりにベタというか安直なので、時系列入れ替えてまで引っ張るような話か……?とその構成に疑問符がついてしまうのだが、もう韓国ホームドラマにおいてはこれは遠山の金さんのごときお約束なのでしようがない。
 ただまあ、先に見た『国際市場で逢いましょう』は最後に主人公がガンで死んでしまったりはしないから、実はそこが良かったのかな、と相対的に評価が上がってしまったね。


 『新しき世界』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140302/1393753744)ファンへのサービスもあって、ファン・ジョンミンのファンなら必見ではある。なんだかんだでぐっとくる演技を毎回見せてくれる人だしな。

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