"ようこそ魔法の世界へ"『オズ はじまりの戦い』


 ひさびさ、サム・ライミ監督作。


 カンザスでショーを営む奇術師のオズ。ある日、インチキを糾弾されて気球に飛び乗って逃げたところ、不思議な世界へと飛ばされてしまう。そこは自分の名と同じ「オズ」という世界。そこでは、その世界と同じ名を持つ偉大な魔術師が、魔女を倒して世界を救うという予言があった。偉大な人間になることを夢見るオズだが、すぐに及び腰に。西の魔女セオドラと、東の魔女エヴァノラに出会い、南の悪い魔女を倒すように願われるのだが……。


 普通の3Dでの鑑賞。本来はIMAX3Dということで、画面をフルに使った演出が楽しい。丸ごとアトラクション的で、モノクロからカラー、スタンダードからIMAXへと展開する映像の転換も含め、オズの世界のスケール感を表現する。


 が、序盤のモノクロシーンの細々とした演出は良かったが、「CGでござい!」というオズ世界に突入したら、急にテンションダウン。いや、画面内で起こっていることのテンションは高いんだが、見ているこちらとすごい温度差があったな。去年、初めてUSJに行ったんですね。で、ご存知「スパイダーマン」に乗ったんですが、あの中で観た映像を思い出したな。こちらの乗ってる乗り物の周辺に次々と怪人が飛び出し、スパイダーマンが説明台詞を入れながらそれと戦う。乗り物が演出に合わせて上下左右……。派手で大げさな映像ですが、あくまでそれはアトラクションの一装置なんですな。


 今作も全編がそのアトラクション感覚に徹しているような作り。ただ、映画館の椅子はもちろん動かないので、周囲のオズ世界が動いているのに翻弄される主人公ジェームズ・フランコのポジションによほど感情移入できないと厳しい。それが出来たかというと、うーん、インチキ野郎の更正のストーリーとしては通り一遍すぎる。ずっとミュージカル映画のようなオーバーアクトで、先のUSJスパイダーマンのような説明的で大げさな演技。手品師という職業柄、それが習い性となっているキャラクターでもあるわけだが、その裏の性格づけがないので、まるで深みがないのですな。


 魔女三人の豪華共演も同じくで、アトラクション映画で何もないところに向けての演技がオーバーアクトになるのもまあしようがないところか。「わあ!」と驚いて両手を広げて見せるような大げささで、わかりやすすぎて食傷気味になってくる。眺めているだけでそこそこ楽しくはあるけれど、2時間も超えてるんだから、眺めて楽しいだけじゃない要素もないと保たないよね。


 そこでまあ、サム・ライミ的な演出やガジェットが大活躍……ときて欲しいところだが、ライミの演出や脚本は、時に文脈から外れてまで暴走するこだわりとも何ともつかない過剰さが面白いのに、今回は「オズの魔法使い」と「ディズニー」の二大文脈をぶちやぶるほどのパワーはなかったな。グリーン・ゴブリン出すなら爆弾! 『スペル』の婆さん出すなら入れ歯だろ! ここらへんバートンの『アリス・イン・ワンダーランド』と同じく、空気を読んだのであろう……。


 まあこういう映画はこういう映画でいいと言いたいところだが、USJなら数分だけど、このアトラクションで2時間越えは、うんざりするぐらい体感時間が長かったわ。特に最後の贈り物のシーンは、『ルーキーズ』かと思ったよ! 人数少ないだけましだが……。


 やっぱりライミさんも興味ない雇われ仕事するとこんな感じか……というところでした。またホラー撮らねえかな。

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