"唇は知っている"『スパイダーマン2』

 BDでひさびさに鑑賞。


 グリーン・ゴブリンとの死闘から1年、相変わらずスパイダーマンと学業とバイトの両立に苦しんでいたピーター・パーカー。舞台を観る約束もいつまで経っても守れず、MJにも愛想をつかされそうになっている。そんな折、親友ハリーの誘いでDr.オクタヴィアスの常温核融合の実験に参加するが、目の前で事故が起き……。


 観るのはたぶん5回目ぐらいか? 『3』公開時にリリースされたエクステンデッド版にて鑑賞。公開版より9分ほど長くなっている。
 細かい会話シーンが追加(と言うよりは復活か)されていて、よりキャラクターの心情が深く描かれる。一作目(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110827/1314371603)からの「キス」を引っ張り、「運命の人とのキスは特別なんだ!」というやたらロマンチックなテーゼが強調されていて、公開版における「キスでスパイダーマンかどうかわかる」という要素がより複合的になった。MJとキスした婚約者の宇宙飛行士が「月まで戻った!」と言ってるのにMJは「あー、うん、普通……」みたいな顔してるとことか、わかりやすいな! 公開版の「この女、フラフラしてるな、おい!」という印象は幾分薄れ、本人の中の葛藤が前面に出て共感しやすくなっている。


 しかしそんなこんなが追加されたため、全体の印象はほぼ恋愛ものになり、大真面目にそっちの要素に着目していたら、途中でDr.オクトパスの存在を綺麗に15分ぐらい忘れてしまっておったわい! 金属の触手のアクションとビジュアルは、まさにサム・ライミだな、という演出でまとめられていてホラー的恐怖感まで醸し出しているし、アルフレッド・モリーナも熱演もいいのだが、さすがに映画としてのバランスが崩れてしまったか。「あ、この人いたっけ……」とか思ってしまった。公開版の方がリズム的には良くて、カットは正解だったかもな。エクステンデッド版はあくまで複数回見る人向け。


 さらに『3』に向けて、ハリー・オズボーンがピーターに恨みをぶつけるシーンもちょこちょこと追加。より物語を味わうためにはいいが、ここも少々くどいかな……。


 とは言え、ひさびさに通して観るとやはりめちゃくちゃ面白かったね。そしてこの切なさときたらさあ。やっぱりこの印象が焼き付いてるから、『アメスパ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120707/1341652906)とかもう軽すぎて見ちゃいられないのである。