"さよなら、思い出の夏"『ピラニア・リターンズ』


 『ピラニア3D』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110828/1314523242)の続編!


 ビクトリア湖の惨劇から一年。オープンを数日後に控えたプール「ビッグ・ウェット」のそばの湖に、再びあの怪魚群が出現する。違法に井戸から水を吸い上げたことで、地底湖から流れ込むピラニア達。果たして、惨劇の幕は上がる……。


 まあ観る前からろくな評判を聞かず、3D映画なのに大阪でも2D公開というお寒い状況がそれを裏付ける。いや、一作目のTOHOでの拡大公開は正直広げすぎで、映画の内容的には今回こそが適正な公開規模なんだろうと思うんだけどね……。
 こちらも3Dにも関わらず全国的に2D公開だった『シャーク・ナイト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120717/1342518422)と同時期公開というのも割を食ってるかなあ。いや、食い合うほどのパイがこのジャンルにあるかというと怪しいが。


 結局のところ一作目も別にヒットしたわけではなく、続編では大幅なスケールの低下の憂き目を見ている。舞台は湖からプールへ。人の数も半減以下。船さえ出てこない。かろうじてクリストファー・ロイドヴィング・レイムスの続投でシリーズの形骸は保っているが、前作並のクオリティを期待すると強烈なショルダースルーを食ってプールの底に叩きつけられることになるだろう。


 予算やセンスの問題もあるのだが、結局のところ前作から決定的に欠けているのは「祝祭」感覚であって、形だけプール開きという体裁を取っているものの、それを金のためでなく、己が魂のために心底から望むキャラが不在であるのが最大の問題点であろう。誰もが待っていた一年に一度の祭で最大限に高まったリビドーが解放される瞬間、それが惨劇へと変転するからこそ、作品全体にカタルシスを孕んだカタストロフィ感が横溢するのであって、そこがオーナー同士の対立に回収されてしまうがごときスケールしかないのは、甚だしい問題である。
 あ〜、懐かしいな〜、天下のTOHOシネマズのスクリーンを占拠して、3Dであんな馬鹿な映画が見られたあの夏! しかし帰りたいと思っても、もうあの季節は二度と戻ってはこないのだね。そういう意味ではオープニングの寂れた湖はノスタルジックで良かったのだが、それがカムバックというかライジングというか、よりパワーアップしたスケールになってこそ続編だろう。祭の日々は終わり、PRIDEがDREAMになったようなそんな寂しさ……。


 まあしかし別に期待しなければ、乳も尻もチンコも血も切り株も魚もゲップが出るほど見られるし、こんな程度でいいのかもしれない。見所はないけど起承転結はある『シャーク・ナイト』と、筋はないに等しいが見せ場だけはある今作、どっちを取るかな〜。ジャンルの新たなエポックとなることを志した?シリーズの幕切れが、類似品と同レベルに成り下がるという結末は切なさだらけだが……。

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