"我が七変化を破れる者なし"『スノーホワイト』


 クリステン・スチュワート主演作!


 小さくも繁栄した王国。だが、王妃を亡くしたばかりの王が、闇の軍団を打ち破ってその捕虜であった女を助けた日、運命は変わった……。女の美貌の虜となり、彼女を新たな王妃として迎えた王。だが、女は、幾多の王国を滅ぼしてきた邪悪な魔女であった。王を殺し、美しい娘の生気を吸って生きながらえる魔女。だが、暗黒の統治下で、一つの希望があった。魔女を滅ぼせるただ一つの存在、魔法の鏡に予言された魔女より美しく成長する娘、先王の娘スノーホワイトである。


 『ゴースト・ハウス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100820/1282270856)以来クリステンには注目し、『ランナウェイズ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110328/1301238090)における活躍にも喜んでいたのだが、『トワイライト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20090203/1233667198)(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20091121/1258727316)シリーズにおける急激な知名度の上昇には、作品自体の拙劣さもあって複雑な気分であった。今やもっとも稼ぐハリウッド女優となってしまった彼女の次回作は、すでに続編も企画されていると言う新・白雪姫伝説。とりあえず『トワイライト』から脱却するための、新たな代表作になってくれればいい、と思っていたのであるが……。
 しかしなんだこのキャラの立たなさわああああ! 元のお話と違って武闘派である、という設定にしたいのなら、もっと最初から剣のお稽古するなりなんなりしとかんとダメだろう。相手役が王子様じゃなくてマッチョ狩人になる庶民性が売り? それなら幼少時代に市井に出て遊びほうけてたとかそういう設定が欲しい。立ってないキャラを「運命」とかなんとか耳に心地よい言葉だけで説明してしまっていて、いかにも苦しい。そりゃあ単なる血統主義じゃないの。ドレスの下にジーパン(のようなもの)を履いて生脚さえ出さないやる気のなさに、猛烈な「終わってる」感を覚えた瞬間、僕は今作に上述の期待を抱くことをやめた。
 まあしかしメリハリのない話で、元のお伽話をなぞるでもなく、オリジナルストーリーとして仕上がっているわけでもなく、単に抜け出して追い回されて目的地にたどりついてそのままクライマックス、という流れは何か考えて書いたようには思えないし、その中で盛り上がりどころ、主人公のブレイクスルーになるような転換点が何も訪れない。妙に豪華キャストな小人軍団の登場は面白かったが、「生命の象徴だ〜」とか急に言われても戸惑ってしまう。


 たぶん、「これは私が頑張らないとどないもならん……」と思ったんだろうなあ。悪役の魔女であるシャリーズ・セロン様、張り切りすぎてまさに独壇場。堂々のセロン様七変化。奴隷セロン様、女王セロン様、牛乳風呂セロン様、ウィリアムセロン様、クロウセロン様、ファイヤーセロン様、ババアセロン様……。ある意味『ヤング・アダルト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120306/1331007057)に匹敵する熱演。こっちの方が白雪姫よりよっぽど重い宿命背負っとるでよ、という業深き魔女を演じ、うーん、これは勝てる気がしない……。毎回レートに応じてギリギリまで脱ぐ癖も健在! ありがとうセロン様!


 『アリス・イン・ワンダーランド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100415/1271347437)のスタッフが揃った、ということだったが、映像的には『ロード・オブ・ザ・リング』フォロワーであったな。七人の小人がドワーフっぽいチビガチマッチョとして解釈されているあたりとか。言われてみれば確かに黒澤や宮崎駿テイストに見えるが、それはフォロワーであるピーター・ジャクソンのフォロワーだからか……。


 アリス、じゃなかった白雪姫の号令を受けて決起するわけだが、そんな簡単に従っちゃっていいのかね?というあっさりぶりで、まああの公爵親子の頼りなさにみんな飽き飽きしてたのかもしれんが……。城門のシーンは、一気に駆け抜けてほしかったなあ。せっかく城門が開くか間に合わないかの瀬戸際でハラハラさせたのに、一回立ち止まってはそれもすっぱり寸断されてしまうではないか。
 我らがソーさん(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110711/1310294131)ことクリス・ヘムズワースもやはり単純マッチョがお似合いで、妻を亡くした男の悲哀を表現するにはちょっと厳しかった。いや、クリステンにせよ彼にせよ、まだまだ若手の素材に過ぎぬ。生かすも殺すも演出次第。思いつきばかり先行した企画の失敗を負わせるにのは酷というものであろうよ。


 さ〜て、クリステンの次回作は何かな。え? ブレイキングドーン後編!? うるさいよ!

ゴースト・ハウス [DVD]

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