2011/1/28 Its showtime さらばバダ・ハリ。悪いオバマことバダ・ハリの守護霊へ、最後のインタビュー。
http://mmaplanet.jp/archives/1637393.html
ひさしぶりの格闘技エントリになります。今回は、かの「悪魔王子」バダ・ハリのイッショにおける引退試合について、いつもの方に伺ってまいりたいと思います。
「始める前に、一つ言っておこう。これが私への最後のインタビューになるだろう」
えっ……(ネタがなくなる……)なぜ……
「お前のネタのことなど知るか! K-1もまだまだもめているようだし、ゴールデングローリーとの提携が力を持つようなら、逆にイッショの方が今度は危機に陥るだろう。ビッグマッチも満足にできないようではな……。この先は少ないパイの取り合い、人材の流出……バダが見限ったキックボクシングのステージは、もはや私にとっても旨味のある舞台ではないのだよ」
わかりました……では、最後と言うことで、じっくり語っていただきたいと思います!
「面倒な話題を先に片付けておくか。アムステルダムで興行を打てなくなったのは、イッショにしてみたら厳しいぞ。ルッツは強がってるようだが、年一回のアムステルダムでのビッグイベントと、その宣伝効果はまさにイッショの基盤だったはずだ。他市、他国でも開催してるし大丈夫、というが、そちらは地元興行の協力も必要だし、言うなれば枝葉だ。太い幹を失ったのはきつい。日本ででも、こんなことがあっただろう?」
PRIDEのフジテレビショックですね。
「PPVがあるから大丈夫、アメリカにも進出すると吹いたが、結局は日本の地上波こそが根幹だったわけだ。そこから長くはもたなかった。よく似た状況だな。日本で、東京都内が格闘技興行開催禁止になってみろよ。あっという間に息の根が止まるだろう?」
流出した人材は、UFCにさらわれたわけですが……。
「ゴールデングローリーと提携した新K-1がその役割を担えるか、は注目しておきたいな。もちろんもとの基盤が小さいから、どこまで背負い込めるか、というところだな」
では、試合について……。
「とは言え、今回の大会はそこそこの規模だし、何より選手のモチベーションが高かったな。こういう選手の目の色が変わるような大きな舞台がなければ、発展は望めない」
リスティVS日菜太(ンギンビVSグリゴリアン)
まず身体の違いに驚きました。
「身体能力が全然違ったな。まさに暴風だ。だが、それ以上に日菜太に余裕がまったくなかったな。入らなきゃ、入らなきゃ、早く左ミドルの距離に入らなきゃ……。立ち上がりをどうイメージしていたかは知らんが、ダウン取られて立て直す際にオプションがないから「いつもどおり」を目指すしかできない」
その蹴りも最後まで距離をつかめませんでしたね。
「蹴りってそういうものだよな。そんな最初っからバンバン当たらんよ。だからこそ、勢いある相手を削って止めるか、かわして距離を保つか……。それを短期決戦の3ラウンド制で、フィジカルが遥か上の相手とやることの難しさがもろに出たよ。策がなかったならお笑いだし、あっても通じなかったんだから惨敗だ。いずれにせよ、正面から当たったんじゃ、トップどころ相手だと今後もこういう試合の再現になりかねん」
今後はどうすれば……?
「ちゃんと競技が整備されてたら、階級を下げた方がいいんじゃないか、ということになるわけだが、哀しいかなまだそういう状況ではないな。同じ70キロでも、体格のばらつきがすごいだろう? 他の階級が充実して平準化が進めばいいんだがな。あと、UFCのように全体に競技として底上げがなされてないとは言え、方法論自体を取り入れて減量法やフィジカルアップを研究してる選手、ジムもあるわけだよ。そういう意味では今後、選手ごとの体格、フィジカル、あるいは技術も、どんどんばらついて差が開くだろうな。トップでやるということはそういうことだから、日菜太もそこに食らいついていかなければな。調子落としてたキシェンコにホームで勝ったことは、もう忘れた方がいいよ。サワー戦はルールで逃げられた、ペトロシアンとは判定まで行ったしバックブローさえあれば……なんてな。そんなあったかなかったかもわからんような貯金は、今回で全部吐き出したな。
ついでだから言うと、ンギンビも同じパターンでやられたな。さすがにグリゴリアンもあの調子で3ラウンド最後まで行ったとは思わんが、打ち疲れる前に潰されてしまった。どの距離でも戦えて、攻められても必ずインローで削るアンディ・サワーの完成度が間接的によくわかる試合だったな」
スポーンVSマヌーフ
「マヌーフは、ちょっと身体が丸くなってたか? 黒人選手は息が長くてベテランになっても瞬発力があるが、40歳手前でガクッと落ちるイメージがある。今回は圧力に押されてたが、以前ほどの集中力を感じなかったな。まあバダの最後の大会ということで出てきたんだろう。
しかしスポーンと向き合うと、やはりメインイベントらしい空気になるからさすがだな。スポーンはこの体格にも慣れてきて、どっしりしてきたな。でかい相手ならそれが欠点になるかもしれんが、小さい相手なら問題ない。「問題ない」カードしか組まれないのが問題と言う気もするが」
ジマーマンVSリコ
ジマーマンはすごい腹でした(笑)。
「ここのところKOで勝ち続けてるが、特にスタイルが変わった感じもないな。パワーだけは上がってるが……。今回もこの身体だから、さぞ圧力が強いかと思ったら、リコの方がプレッシャーをかけて、ずるずる下がっていったい何をやってるんだ……と思ったら、あっさりKO勝ちだからな。相変わらず正統派からは程遠い、おかしな選手だよ。リコは相変わらず、でかいだけでもたついてたな」
ギタVSカラケス
ギタは充実してましたね。
「仕上がりはもろに身体に出るな。あの腹の絞れ具合を見たら、気の弱い奴はそれでもう闘志を失うぞ(笑)。カラケスは守りに入ってる印象だったな。出ながら見ていたギタと、ただ見ていたカラケスの対比だ。まあ前回も正直勝った気はしていなかったんだろうよ。しかし、コーナーで突っ立ってしまったのはまずかったな。圧力を掛け返すことを考えてる間に一発ドカンともらったな」
フィニッシュも鮮やかでした。
「カラケスも一発もらって火がついたが、逆にギタの誘いに乗ったようなものだな。前に出て返したが、チャクリキ魂が裏目に出た。あのアッパーは不用意だったし、狙い澄ましたような一発だった。どっちが王者かわからんような試合運びだったよ」
バダ・ハリVSサキ
さて、いよいよメインについてですが……。
「どれ、ちょっと映像を見ながらやるか。ほら、リモコンを寄越せ」
あっ……。
「おっとっと、危ない危ない。動きが固いな。大振りなパンチだよ。ほんとにこれでボクシングに行く気かな?」
かなり力んでる印象ですね。
「ただ、サキもかなり力は入ってたな。サキは良くも悪くも闘争心が強くて、自分の体格を忘れてるようなところがあるからな。この試合もバダは力んでるし、会場は変なテンション、自分も勝てばリターンが大きい、ということで、普通の状態ではなかったな。おっ!」
出ました、アッパー!
「モーションが見えないこともなかったと思うが、これをもらったのはまずかったな。事実上、ここで勝負ありだ。それにしてもミドルもローも走っていたし、スタイル変更を逸ってるかと思ったが、まだまだキック仕様だった。もう見納めだがな……」
ガードの上からでも効かせました。
「この破壊力はどこへ行っても通用するだろうよ。最後も踏み込んでのアッパーか。サキもよくここまで立ったよ」
勝ってしばらくしてから、やっと笑顔が出ましたね。やはり相当プレッシャーがあったのでしょう。
「そうだな。そのプレッシャーに負けて、色々なことをしでかしたな。だが、バダは谷川体制化のK-1で、もっとも成功した選手だった。成績じゃあない。そのストーリー作りと興行の連なりの中での育成においてな」
- 2005年 衝撃のデビュー(レコをバックスピン葬)
- 2006年 K-1の洗礼(グラハム、カラエフに惨敗)
- 2007年 ヘビー級タイトル奪取(カラエフとの名勝負)
- 2008年 レジェンド狩り(セフォー、グラウベ、アーツを粉砕)
- 2009年 絶対王者を撃破(シュルトKO、アリスターにリベンジ)
劇的なストーリー展開でしたね。着実に成長して、ステップアップを見せました。
「K-1王者になれなかったのが唯一の瑕疵だが、王者と同等の実力があるのは誰もが認めているさ。お、ジマーマンまでリングに上がってきたな。ふんっ、気に入らないな。何たるさわやかごっこだ、まったく……。さあ、もう一回見るか。おい、リモコン」
えっ、またですか!?
「ほうら、ここで……そら、ナイスアッパー! はっはっは、いいぞいいぞ。サキめ、もうよろよろだ。いいKOだ。最後まで、本当にいいKOだったよ……」
あ、あの……もしかして、泣いて……?
「フン、バカなことを言うな。……さらばだ、わたしの王子。とりあえずはお別れだよ」
今まで、ありがとうございました。
「ブームは終わったが、立ち技業界がなくなるわけじゃない。K-1も細々とではあるが続くかもしれん。続きさえすれば……また新しい人材が現れる事もあるだろう。バダのような……わたしに魂を売り、血と生贄を捧げてくれる戦士がな……いずれその時がくれば、また相見えようぞ」
悪いオバマことバダ・ハリの守護霊の方に降臨していただきました。ありがとうございました! ひさびさの格闘技エントリーになりましたが、次回はまったく未定です(笑)。一応、UFC日本大会は観に行く予定ですので、その時に何か書けたらいいですね。