"光ってる! フリークよ!"『アイ・アム・ナンバー4』


 アメコミ映画かと思ったら違うんだな。こっちで言うライトノベル的な小説の映画化。


 かつて、地球に産み落とされたロリアンの9人の子供達。異星人である彼らを、宿敵モガドリアンが追う。ナンバー1から3は成人を前に殺され、今、ナンバー4に危機が迫る。守護者と共に常に移動し、行方をくらまし続けるナンバー4。だが、彼の心にはある想いがくすぶっていた……。


 『トワイライト』とか『ダレン・シャン』とか、同じような小説の映画化を観たくもないのに試写状もらったから観に行ったりしたのだが、やっぱり肌触りには共通するところがある。基本的には「吸血鬼」や「地球にやってきた宇宙人」の道具立てを押さえているのだが、部分部分を簡略化し、「現代で学生生活を営める」ようにして学園ものにしてしまうためにリスクのある設定を廃している(吸血鬼が昼間出歩いてもいいのかよ、みたいな……)。ごめん、ここは目をつぶってね! 広い心で楽しんでね! こうしてまさに「ライト」な設定にすること自体はよくあることだが、そうして薄めた分、どこをオリジナリティで味付けしていくか、に、作り手の力量が問われる。


 ……で、結論から先に書いてしまうと、先に例に挙げた吸血鬼ものなんかよりはずっとマシで意外に面白かったんだが、それはなぜかというと、余計なオリジナリティがなかったから、に尽きるのだなあ。
 主人公は自我の薄い無個性な奴だし、学校で絡んでくるアメフト野郎のベッタベタな嫌がらせ、そのアメフトにいじめられてるオタクのクラスメート、アメフトと昔付き合ってたカメラ好きのヒロイン。「写真には本当のあなたが写る」という言い回しも、もう手垢つきすぎだろ! ティモシー・オリファント演ずる育ての親兼ガードマンの人が口うるさい事言って、さらには犬まで登場する。開いた口が塞がらん程のベタさだ!
 しかし、裏を返せば余計なことを何もしてないので、妙に奇を衒った人物設定にいらついたり……いじりすぎて古典を冒涜するようになってしまった設定にむかついたり……変に回りくどい野望を掲げて墓穴を掘る悪役にめんどくさくなったり……そんなことはなんにもない!
 旅をして……その先で恋をして……戦って去る。でも行く先々で、少しずつ仲間が増えていく。本当に定番中の定番ストーリーで、無理に余計な捻りを加えず、癖もないんだが、嫌味もない内容。たぶん、小説で読むとつまらなくて放り出してるが、映画は眺めてるうちに終わるからなあ。壮大なシリーズの冒頭、というイメージで、続編作るなら延々と続くんだろうなあ、と思ったが、その続編自体は原作でもまだ書かれていないらしいが……。


 主人公の覚醒も早いしブレイクスルーもないしと、あまり溜めのないストーリーでもあるが、その中でも溜めて溜めて登場するナンバー6ちゃんが活躍するクライマックスは面白いし、冒頭のトカゲから実は密かに溜めていた犬の活躍も良かったね。敵も基本襲って来るだけの人たちなんで、バトルもシンプル。やるかやられるか、それだけ。テンポも良く、宇宙人も地球人も入り乱れて総力戦になるから、クライマックスに相応しい盛り上がりになる。


 落ち穂拾い的に。
 主人公はイケメンなので普通にもてるが、脚が光り出して「フリーク!」呼ばわり! このシーンだけをもって「流離するものの悲哀」とか言いたくないが、気の毒ではある。
 祭りでのデートのシーンで、スプラッタショーやってるのはなかなか面白かった。一部メイク凝りすぎだろ! 作中、宇宙人マニアというのが出て来て念願の宇宙人と絡むのだが、ああいうホラーマニアもいて、実は今作の裏側ではスプラッタな怪人達も暗躍していたのかもしれない。製作マイケル・ベイだしな。
 あとはやはり犬! あまりに脈絡なくて冒頭のトカゲからどうつながってるのかわからなかったのだが、なるほど、そういうことだったか、という活躍。最後のシーンも、片足上げて歩いて、何気に名演ではないか。


 オススメするかというと別にしないのだが、ちょっと仕事で面倒なことを抱えて、協力してくれる人が現れた時に観たせいか、ナンバー6や犬、UFO野郎が集結してくるところで、「うーむ、仲間っていいよなあ……」と言う気分に珍しくなってしまった。オレもナンバー4みたいに戦うぞ! 大した映画じゃなくても自分に重ねて心に残ってしまう、たまにそういうことがあるんである。

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