"現金は持ち歩かないようにしましょう"『ロシアン・ルーレット』


 『13/ザメッティ』のリメイク。


 事故で入院した父の治療費のため、電気技士として働くビンス。ある日、工事に入った家に住む男の「大金を稼げる」という話を立ち聞きしてしまう。麻薬による男の急死をきっかけに、ビンスは彼の元に届いた封書を盗み出し、謎のゲームの参加者としてエントリーする。だが、それは実弾を使い命を賭ける、本物のロシアン・ルーレットだったのだ……。


 オリジナルは観てませんが、ざっとレビューを漁った限りはかなり忠実っぽい。のだが……。


 タイトルのロシアン・ルーレットのシーンが、緊迫感はあるのだが、あまりにゲーム性がない。単に運任せなゲームになっている。「経験のある方が有利」と何度か強調されるのだが、そう思える要素があまりに少ない……。心理的な駆け引きもないし、主人公が恐怖を乗り越える過程も不明瞭。緊迫感のある雰囲気でまとまっているのだが、ちょっと構成を単純化しすぎではないか。起承転結でいうと「転」がない。


 さらに、肝心のゲームが単純なものであるがために、同じ事の繰り返しが続いたあげく、クライマックスとなるべき最後のロシアン・ルーレットも盛り上がりなく終わる。映画はそこからさらに続くのだが、その後のゴミ袋漁るシーンは結構ハラハラしたもののクライマックスとは呼べないわなあ……。


 家族のために金を稼ごうとする主人公なのだが、実はゲームの内容を知らずに来ているため、その覚悟や意志を発揮する場面もなく、状況にただ流されているように見える。「とんでもないことに足を突っ込んでしまった……!」と気づいたところでもう遅いのだが、そこから腹をくくるブレイクスルーがなく、なんとなく展開が転がってしまうため、ちっともキャラが立って行かない。
 そしててっきりジェイソン・ステイサムドン・フライもゲームに参加するのかと思ってたよ。途中の参加者の抜けっぷりもあっさりしすぎで、いまいちドラマがない。ミッキー・ロークも、全然主人公に絡まないんだもんなあ。かといって群像劇にもなっていないし……。


 で、こういう人様の命を使ってお遊びに興じるゲスな金持ちどもこそが、吐き気をもよおす邪悪とでもいうべき存在だと思うんだが、そこらあたりにもまったく切り込まないんだよねえ。否定もしなければ肯定もしない、ストーリーに関わるわけでもなく、ただ「設定」としてそれっぽくそこにあるだけ……。


 極端に破綻もしていないが、アイディアだけで作ってしまった印象の作品。設定とキャストさえ揃えれば、何か映画に力が生まれるように思ってしまった勘違いの産物か? しかしオリジナルがそうならば、なおさらリメイクする理由がわからんが……。まあ最後に素晴らしい教訓を残してくれたから良しとしよう! みなさ〜ん、多額の現金は、決して持ち歩いてはダメですよ〜!


 アップする前に気づいたが、こっちの記事の方が面白い。

運命からその銃をもぎ取れ 『ロシアン・ルーレット』 - 殺風景の記録
http://d.hatena.ne.jp/sappukei12/20110623/1308848666

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