『新機動戦記ガンダムW フローズン・ティアドロップ』1・2 隅沢克之

 ガンダムエースで連載中。『ガンダムW』の正統なる続編小説。


 AC195、196年の戦乱より数十年後。火星圏に巻き起ころうとする戦乱を前に、プリベンターの准佐キャシィ・ポォは、直属の上司である老師・張よりある任務を受ける。かつての戦乱の時代を記録したファイルを火星支局に届け、それをもって「オーロラ姫」を目覚めさせよ、と……。「オーロラ姫」……人工冬眠用冷凍カプセル。そこに眠るのは、かつての英雄と同じ名を持つ、「ガンダム」のパイロット「ヒイロ・ユイ」であった。


 いや〜、まさか今になってWの続編とはね〜(笑)。我が青春! もうあれから15年とはね〜。雑誌連載時からちょこちょこネタバレは読んでいたが、ヒイロとリリーナが冷凍睡眠で数十年後も同じ姿という設定には仰天した。


 作者はテレビシリーズの構成をやっていた隅沢克之、文章上手くなったな〜。というか、小説向きにアジャストしてきた感じか。昔『エンドレス・ワルツ』の頃に出したノベライズは、下手だな〜と思ったものだが、文体こそ同じだが格段に進化している。


 後付け設定と、なくてもいいんじゃないのという説明に、ちょっぴり興醒めという部分もあり。『オペレーションゼロ』の時からすでにそうだったわけだが……。「なんなのこの人たち」「いったい今の台詞はなんなの」「意味が分からない!」という感覚こそがウイングの魅力であり、それに何でもかんでも「実はこういうことだったんですよ」「こういう過去があったんですよ」と説明を付け加える必要性は、あまり感じない。
 月面での戦闘で、リーオーの改造型が出てくるあたりの戦闘は、なんか『銀英伝』っぽいな……(笑)。戦国時代みたいな、「武将の器量」が戦いの行方を決める世界なので、なんとなく似て来るのか。
 ただまあ、現在のパートと過去のパートを交互に進行させる設定はなかなかいいし、情報の出し方のもったいつけ方もうまい。マックスウェル神父と老師・張の関係や距離感の描き方など、やはり作者は『ガンダムW』という作品を手の中にしっかりつかんでいるのだなあ、という印象は受けた。「公式の同人誌」という感じがないのは大したものではないか。


 さあ、まだガンダムも出てきてないし、ヒイロ以外の「後継者」も揃っていない。旧キャラの再登場も含め、続きがどうなるかに期待したい。

新機動戦記ガンダムW MSエンサイクロペディア

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