”思い出になっていたはずだった”『ニューヨーク東8番街の奇跡』

 DVDで鑑賞。


 ニューヨーク、東八番街……。開発が進み、立ち退きが進められる区画。周辺の建物がすべて取り壊された中、一見のアパートだけが残っていた。一階でカフェを営む老人・フランクは、痴呆気味になった妻・フェイとの生活を守るため、執拗な地上げに抵抗し続けていた。地上げ屋に店を打ち壊され、フランクが失意に陥っていたある夜、不思議な光が飛来する。それは、機械を集め修理する、小さな空飛ぶ円盤だった……!


 1988年の正月……当時10歳のその少年は、ある映画の新聞広告に胸を高鳴らせていた。『E.T.』公開から5年後、『トランスフォーマー』が大好きだった彼は、その宇宙から来た小さな円盤が深夜に尋ねてくるポスターに目を奪われ、その円盤の変形のメカニズムにあれこれと思いを馳せていた。これは見たい……。
 その正月、恒例行事であった祖母の家へのお泊まりから当時の梅田劇場にて映画鑑賞……。今年は『ニューヨーク東8番街の奇跡』で決まりだ!


 しかしながら、祖母と母の間で意見の一致が見られ鑑賞したのは『007 リビング・デイライツ』であった……。


 10年以上の月日が流れ、少年は大人になり、当時を振り返ったのだが、確かに見たいとは思っていたものの、そう思っただけで、はっきりと発言した記憶はない。あまり主張の強い子供ではなかったはずで、無理もない……。で、母親が当時、少年を連れて行った映画と言えばジャッキー、インディ・ジョーンズ、シュワ、クロコダイル・ダンディーetc……(その他自分の観たかった映画。珍作多数)。なるほど、『ニューヨーク東8番街の奇跡』は微妙に「教育方針」から外れているし、今も彼女はスピやん絡みの映画が嫌いである。『ミュンヘン』でさえディスっていたぐらいだ。


 ちなみに他にその正月の公開作品で見たのは『バトルランナー』、冬休みが明けてから『危ない刑事』と『七福星』の二本立ても見たのだった。どんだけ行ってるんだよ!
 少年が長じてから当時の不満を申し述べたところ「オレ、あれ見たかってんよな〜」、「えっ……! そうやってんや。ごめ〜ん」と割合素直な母であった。


 さて、その作品をやっと見る事が出来た。
 一応UFOスタイルで全身メカなんだが、はっきり宇宙から来たという描写もなく、SF要素は薄い。日本では座敷童でもドラえもんでも通りそうな話で、一種のお役立ちの妖精譚ですな。宇宙ものなら『コクーン』、最近の映画では『レディ・イン・ザ・ウォーター』とか『ミラクル7号』など。円盤たちの能力が「何でも修理する力」だということが明らかになる序盤で、もうオチまで全部想像がついてしまう。


 やや痴呆気味で地上げ屋と息子の区別がつかない婆さんと、そんな婆さんを抱えて先行きに苦悩する爺さんの関係を主軸に話が進む。同じアパートの売れない画家や妊婦、元ボクサーなどキャラクターが出てくるのだが、賑やかし程度。サブキャラの役割分担が、爺さん婆さんに割り振っても別にいいだろうという程度にしかプロットに絡まないのが難点か。80年代の開発ラッシュに沸くアメリカへの批判としても、中途半端かな……。
 オーソドックスな作りで、外してはいないものの名作とは言いがたい。が、どこか放っておけないかわいらしさのジェシカ・タンディの演技は素晴らしく、息子と地上げ屋と「円盤」の家族関係へのこだわりに、説得力を持たせている。


 味と言うほどの味がなく、物足りない内容だった。やはり子供の頃に見ておけば良かったなあ。クライマックスなども、昔見てたら「やっぱり」とは思いつつ、興奮したと思うが……。

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