”大変なものを盗んでいきました”『コードネームは孫中山』

 
 大阪アジアン映画祭2015、六本目。


 未納の学級費の取り立てが厳しくなり、困っていたアツォ。同じ悩みを抱える三人の同級生たちと共に、山分けし、学級費を払うため、体育館の倉庫で埃をかぶっている孫文の銅像を盗み出そうとする。変装用のお面や運搬用の台車を用意し、準備は万端。だが、偶然にもシァオティエンという学生が、同じ計画を立てていることに気づき……。


 我らがグイ・ルンメイのデビュー作『藍色夏恋』(未見)の監督が十数年ぶりに撮った長編映画。当時はルンメイちゃんも共演のチェン・ボーリンも無名だったが、今や大スター。そんな二人のフレッシュな魅力をカメラに収めたのと同様、今作でも無名の新人を起用し、その新鮮さをお届け……!


 舞台は学校、男子中学生たちが主役。学級費をケチろうと目論む男子が、同級生たちに学校の体育館横の倉庫に放置された孫中山の銅像を盗み出し、それを売り払って金に変えようともちかける。しかし、奇しくも同じ計画を立てる男子がいて……。


 コメディタッチのドタバタ設定で、いかにもハイスパートなテンポの映画になりそうな気がするのだが、少年たちの生の存在感を出すために、カメラはひたすら長回しし続ける。弁の立つわけでもない中坊たちの会話のたどたどしさ、リアルに生まれてくる間、リアクション……。テンポは壮絶に犠牲にしつつ、業界にも世間にも毒されていない、少年たちの一瞬の煌めきを映し出す。


 女子とか一切出てこないのだが、それも含めて少年時代の最後の輝きという気がするな。男子だけで集まって馬鹿なことをやってるのが一番楽しい年頃。ちょっとそこの男子とひとくくりにされがちな時代。この後、どんどん色気づいていって、こんなピュアな輝きは失っていくのだ。舞台挨拶で来日した主演二人は、すでにかなり小洒落ていてたしな……。


 見てる間は長回し過ぎで少々かったるいのだが、後からじわっと心に響いてくる映画。ああいう煌めきが、側から見ればあったのであろう、自分の子供時代にも……。

藍色夏恋 [DVD]

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