"アンディ・サワー&カン・リー"『パンドラム』
『イベント・ホライゾン』かと思ったら『ディセント』だった。
22世紀、人口の増加により、エネルギー危機に陥った地球。123光年の彼方に発見された地球型惑星に移住すべく、冷凍睡眠した6万の人間を乗せた巨大宇宙船が出発する。
暗い冷凍室から目覚めたバウアーは、冷凍睡眠の副作用によって、記憶を失っていた。ここはどこだ? 自分は宇宙船のクルーなのか? なぜ、誰もいない? 同じく目覚めたペイトンと共に、記憶を辿りながら船の中枢を目指すバウアー。だが、その先には想像を絶する恐怖が待ち受けていた……!
製作のポール・アンダーソンと言えば「宇宙のシャイニング」こと『イベント・ホライゾン』。狂いまくったサム・ニールが大暴れするこの映画、結構お気に入りだったのだ。だが、宇宙船に何者かが取り憑いた、というおかしな設定の彼の映画と違い、今作は冒頭から早くも違う方向性を呈示し始める。
洞窟のような狭い換気口を抜け、最初の船室からようやく脱出した主人公。そこで待ち受けていたのは……。
ギャー! フギャー! ギュヒー!
……怪物でした! 『ディセント』かよ! 思わず監督名、確認しただろ! 体毛のない白い肌が不気味な怪人が襲いかかって来て、気分は否応無しにあの恐怖の洞窟ホラー。
ここで主人公と同じく、冷凍睡眠から目覚めた他の乗員との出会い。格闘技に長けた乳のでかい女と、英語を喋れないながらもこれまた凄腕の槍の達人! あちこち通電していない宇宙船を再度動かすため、原子炉の再起動と現状の把握のため、中心部を三人で目指す事になる。
主人公を演ずるのはベン・フォスター。『X-MEN ファイナル・デシジョン』など何作か出演作品を見ていたが、印象には残ってなかった。しかし……この顔……誰かに似ている……。この短く刈り込んだ髪型のせいか……? 「ボーイスカウト」と揶揄される若い風貌なのだが、血みどろで怪物に追いかけ回され散々な目にあったあとでも、ふっと落ち着いた佇まいと冷静さをかいま見せるその所作。そうだ、K-1MAX2005,2007王者アンディ・サワーに似てる! あの冷静さが、まるで必殺の右クロスを狙ってるかのようだ。
そして武術の達人役は、格闘家カン・リー! 中国じゃドニー・イェンとも対決してきたらしいが、ハリウッドでも地底の怪物(違)相手に、あまり必然性のない大立ち回りを見せ、乳でか女と共に大活躍!
アンディ・サワーとカン・リーという夢の共演によって(しつこいようですが違います)、格闘技ファン的には観るべき映画になったなあ……。
巨乳の人はアンチュ・トラウェという女優で、初めて見る人だったが、これはいかにもアンダーソン好みの強いヒロインなんだろうね。
怪物、格闘家、闘う美女、それに加えて宇宙船という閉鎖されたSF空間と、その壊滅にまつわるサスペンス、と色々と美味しい物がバンバン出てくるこの映画、つまらないわけがない。閉塞感漂う序盤から、中盤以降は息もつかせぬ怒濤の展開で攻めてくる。このリズム感も良いですな。切株描写もバッチリです。
終盤、ある事実が明らかになることで、宇宙船の星を目指す旅は、より一層重大なテーマを帯びてくる。しかし、状況はより深刻化。リミットの迫る原子炉の暴走、増える一方の怪物、そして裏切り……。絶望しかける主人公。自分たちだけ生き残って、いったい何になるのか……?
それをヒロインが諭す。崇高ささえ立ち上らせて。
こういうパニックものにありがちな、ただ恐怖と生存本能に駆られて闇雲に出口を目指すのではなく、残された者の使命として「生き残らなければならない」と。ああ、強いのは格闘技だけじゃなかった。でかいのも乳だけじゃない! 心が強く、肝っ玉がでかいのだ。これこそヒロインだ! 主人公もそれによって勇気を取り戻す。
クライマックスで全ての真相と船の現在位置が明らかになった時、荘厳とさえ言える結末が訪れる。これも中盤に伏線が張ってあって、唸らされた。
盛りだくさんながらかっちりまとまり、なおかつ細部も美しい。期待していなかったが、これは思わぬ拾い物だった。そうそう、デニス・クエイドも出てますよ。
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