"俺が見えるか、怪物ども。実体もなく忍び寄る、黒い影が"『アフター・アース』
ウィル・スミス親子共演!
人類が他の惑星に移住して、1000年……。訓練のために星を飛び立った「レンジャー」たちの宇宙船がトラブルに見舞われ、航路を外れての不時着を余儀なくされる。生き残ったのは伝説の戦士サイファと、彼の息子でレンジャー訓練生のキタイのみ。だが、サイファは負傷して動けず、離れた場所に落ちた宇宙船の尾部から通信機を手に入れるため、キタイが未知の惑星を一人旅せねばならなくなる。未知の惑星? いや、違う。そこは、人類を敵と見なす星。その星の名は……。
『エスター』のイザベル・ファーマンが出てるということだったので観に行った……はずだったんですが、IMDBにはクレジットされてたけど、出番はまさかの一瞬! 訓練生たちが整列しているシーンで、ジェイデンの隣に立っているのが映るだけの出番でした。あ〜、これってドルフ・ラングレンの銀幕デビューこと『007 美しき獲物たち』を思い出しちゃいましたね……。
さて、英雄なんだけど息子とちゃんと向き合えておらず、会話できないダメな父親であるサイファ(ウィル・スミス)が、負傷し自らは動けなくなったために息子キタイ(ジェイデン・スミス)に任務を託す……ということであるが、いや〜、やっぱり実の親子ということで、本物は親子仲のいい写真やら映像やらをバンバンUPしちゃってるわけじゃないですか。ウィル・スミスが、どうも無理して厳めしい顔を作ってるような違和感が拭えない。シャマラン監督から「カット」の声がかかれば、しかめっ面はどこへやら、
ウィル「ジェイデン、いい演技だったぞ!」
ジェイデン「パパー!」
とか言ってたのではなかろうか。いや、別に内幕がそうであっても何一つ問題ないのだが、そういうことを容易く想像させてしまうのはどうなんだろうかね。逆にもっと親子仲良くて、ジェイデンはパパにべったりだけど、止むを得ず単独行動する……という展開にしたら、遥かにしっくり来たように思うが。でも、これはそういう親離れの話ではなかったのだね。
舞台は地球であるのだが、ここはもう人類にとって危険な星になってるのですね。具体的には、大気の組成が変わっていたり、気温の変化が激しかったり、動物が大型化、凶暴化していたり……ということだが、まあそれなりに問題ではあろうものの、どれも決定的な要因とは思えなかった。ジェイデンは薬飲みつつとはいえ、着の身着のままでウロウロしているわけだし……。哺乳類だって、紀元前の方が遥かに大型だったわけだからな。
おそらくだが、そういった物理的な障害よりも、地球がそうして人類の住みにくい星に変わってしまったこと自体が、ある意味、宗教的な「タブー」「原罪」的なものとして捉えられているのではないか。冒頭で語られる歴史で、地球を離れた人類が戦うための組織を作りつつも、宇宙人との戦いで絶滅の危機を迎えるまで動かしていない点であるとか、サイファ以下、火器を持たず棒状の武器を使うのみであるあたり、何か戦争がらみで、戦うこと自体がタブーになっているところがあるのではないか。
結局、その地球にまつわる問題は今作では語られず、何一つ解決しないわけだが、この世界観においては一種の禁忌であると共に「聖地」として残り続けるのだろう。まあしかし、タイトルが『アフター・アース』なのに、そっちは放っておいて自分たちが他所から持ち込んだ怪物と戦うのがクライマックスってのはびっくりしたね!
そのクライマックスで、ジェイデンは父と同じ恐怖を超えた「ゴースト」として覚醒するわけだが、その死んだ魚のような目と凄惨な戦いぶりは、おそらくそれを見守るウィルからしたら、父親としても人間としても決して喜ばしいことではないのではないか。彼自身、それに飽いて引退を決意していて、レンジャーになりたかったジェイデンも「ゴースト」となったことで父の思惑を悟る。レンジャーとして、男としての成長と通過儀礼の話かと思われていたのが、突然「パパといっしょにママの仕事を手伝うよ!」と言い出して「あれっ!?」となったが、上記の戦いに対するタブー仮説と合わせると、まずまず平仄が合うのではないか……。苦しい?
そんな感じで、宇宙船が布製だったり、雛鳥を守るために戦ったら親鳥が助けてくれたり、全体的に寓話的と言うか、おとぎ話のような設定が満載で、ハードなSFと思って観ると活かされてないことが多すぎるのだが、『アイ・アム・レジェンド』もグズグズになったウィル・スミスと、言いたいことの先走った映画作りをするシャマランが合体するとこうなるというのは、さもありなんというところであった。もうちょっと脚本と要素を整理したら、まだ良くなったと思うけど……。
ま、この人らに言っても無駄だろうがね!
名前の由来が「期待」とか「戦士」というのも、アメリカやブラジルの格闘家が身体に漢字の入れ墨彫っちゃうのを思い起こさせ、微笑ましいというか恥ずかしいというか、何とも言えない気分になったのでありました。
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