ベタなドラマにぶっかける冷や水としてはちょっと量多すぎない?『TSUNAMI -ツナミ-』


 韓国製パニック映画!


 人口100万人を誇る海辺の街ヘウンデに、津波が押し寄せる? それも高さ100mに達するメガ津波? 地震学者の突飛な主張は受け入れられず、まもなく文化エキスポが開催される街では、避難対策は遅々として進んでいなかった。海で事故により死んだ漁師の娘であるヨニは、父の後を継いで魚を捕り、小さな食堂を経営している。死んだ漁師にヨニを託されたマンシクは、彼女を見守りながらも、自分の気持ちを伝えられずにいた。幾多のドラマが交錯し、静かに時間が流れて行くヘウンデの街。だが、予期された海底地震は、着々とその震源を半島へと近づけていたのだった……。


 前半一時間ぐらい、100万人の住む町を象徴する人間ドラマが延々と続く。舞台は主に海沿いだ。地震津波を予期する博士も、別れた妻と自分の事を知らない娘、というドラマを抱えている。女子大生を助けた海難救助隊員。海で漁師の父を失った娘と、その娘を託された男。海沿いにショッピングモール建設を企てる地主。博士以外はほとんど親戚だったりするのだが、そこをうまく利用してそれぞれのドラマを絡め、同時進行でも飽きさせない。


 CGのクオリティはどんな程度かと思ったが、「メガ津波」はさすがの迫力。海岸線にじわじわ迫ってくるタイミング。海水浴に来ていた大群衆が、街中へと走って逃れるのだが、じょじょにそれに追いつき、一撃のもとに飲み込む。一発で押し流されてしまう人や、直撃は避けたものの水に囲まれて逃げられなくなる人など、危機のバリエーションも色々とあっていい。
 一番感心したのは、巨大ホテルのガラス全てをぶち割ったシーンと、ホテル中を満たした水が、その破れた窓から流れ落ちるシーン。本当に大津波が来たらこうなるかな?と想像していたそのままだったので、ちょっと感動したね。
 すげえと言ってもたかが津波だろ……と思ったが、パニック描写は一気呵成に畳みかけて来るので、緊迫感をきっちり持続させ、テンポもぎりぎりキープしている。


 韓国は地震が少ないため、地震計などのデータを日本に依存していて、対策が遅れているという部分が面白かった。ご当地でどれだけ社会的な意識を込めて作っているのかは知らないが、しかし正直日本の行政も一般市民も、意識としては大して変わらないと思うよ。


 全ての登場人物が見上げる中盤の花火のシーンなど、本当に構成はうまいが、さすがに個々のドラマがどっかで観たようなものばっかりなのはややマイナス。博士の元嫁が「これが私の仕事なの!」と怒鳴るとこなど、激しく既視感を覚えた。女子大生も、こりゃ『猟奇的な彼女』フォロワーか? チョン・ジヒョンじゃないから、単にうっとおしい女にしか見えないんだが……。漁師の娘の結婚話もベッタベタ……。
 パニック物の王道ですから! と言い切ってもまあ語弊はないだろうが、もう少し新味も欲しかったような気がする。


 とは言え、期待値分はしっかり楽しめた作品。もう誰もが忘れてると思うけど『252 生存者あり』なんかよりは断然面白いと思いますよ。観てないけど……。